マネージャーに必要なのは「構造化」スキルだ!
マネージャーは、部下に何を教えていますか?
その指導は、部下が成果を出すことに役立っているでしょうか?
マネージャーが組織のボトルネック?!
マネージャーの経験や知識は、マネージャー自身が現場にいた頃に培われたものであり、マネージャーとしての立場を下支えするものだと思います。
そんなマネージャーの経験や知識は、組織にとって貴重な暗黙知であり、形式知化して、
部下の指導に役立ててほしいと望まれることも多いでしょう。
しかしながら、ことはそう簡単には進みません。
組織を牽引し、部下の指導に自らの能力を活かすことが期待されるマネージャーですが、こんな企業様の声もよく聞きます。
「組織のボトルネックはマネージャーだ」「組織の課題はマネージャーにある」
プレーヤーだった頃には頼りになるエースだった人材であっても、
「部下を持った途端に、組織の足を引っ張るモンスターマネージャーになった」
期待どころか、むしろ煙たがられる存在のようにも聞こえます。
もちろんすべてのマネージャーにあてはまっているわけではなく、
一部のマネージャーに焦点があたり「課題」として表出化したものだと思われます。
能力を買われて抜擢されたはずのマネージャーの課題の多くは、部下マネジメントの片翼である部下の育成力。
なぜ、マネージャーの部下育成力は、低い評価を受けてしまうのでしょうか。
マネージャーは何をどう活かせばいいのか?
変化スピードの早い現代において、マネージャーがかつて現場で経験したことは、すでに過去のものとなっています。
そっくりそのまま再現しても、現代のビジネスには適用できない局面が多いのが実情です。
また、有用な経験であっても、部下に理解してもらえるように伝達するのが難しく、煙たがられたり、または、間違った解釈で伝わってしまったり、一筋縄では行きません。
つまり、経験そのものの情報のままでは、「教え」に活用できないということ。マネージャーの過去の経験や知見は、そのままの情報では部下には役立たないのです。
ならば、マネージャーは部下の育成に、その経験をどう活かしていけばいいのでしょうか。
どれだけ価値の高い経験も、指導につなげるためには、部下に伝わるよう、そして現在のビジネスの文脈に活用できるように有効な情報に「変換」しなければなりません。
マネージャーの指導に必要とされるのは「構造化」スキル
経験は貴重です。過去のものでもすべてが無駄とは言い切れません。
現在のビジネスの文脈に生かすためには、その経験を一度、概念化し、今の状況に即したルールに昇華させる必要があります。
その際に意識したいことが「構造化」です。
現代のマネージャーが指導力を上げるには、この構造化スキルが不可欠です。
構造化とは、「事象や物事などの全体を定義した上での構成要素と
それら構成要素間の関係を整理すること」です。
構造化のメリットは、以下のようなことがあります。
・問題を解決する際に「モレやダブり」を回避しやすくなる
・問題の原因を見つけやすくなり、的確に対処しやすくなる
・事象の関係性がわかるので、問題解決の優先順位がつけやすくなる
・情報が整理されるので、コミュニケーションがしやすくなる
部下に多くの情報を伝達する際に有効だと思いませんか?
そうなんです、自分自身の経験を伝える、それをもとに育成する際に、この「構造化」は最適な方法となります。
とはいえ、「構造化」・・・ そういう時に、様々なフレームワークが役に立つのですが、「どうも難しそう」、
「正しいお作法がわからなくて敬遠してしまう」など、ちょっと苦手と思われる方が多いのも事実です。
そこで、構造化を難しく捉えず、簡単に実践できることを紹介します。
1. 経験をいくつかの項目で要素分解する
例:「いつ」「どんな場面で」「誰と」「何があったのか」「その関連性や理由は何か」
2. 同様のパターンの経験を、さらに同じように分解して、共通項を見出す
3. その共通点から何が言えるのかを整理する
4. 整理した要素に「要素名」と「定義」をつける
事象の各要素から全体像が示し、その定義や関係性が説明できるようになれば、「構造化」の第一歩。
「構造」はある学習する際のルールとして機能するので、部下にとって有用な情報となります。
OJTの場面で求められるマネージャーの「構造化」スキル
OJTなどの部下指導の際に、多くの部下が不満に思うのが、
「経験から指導される対処法は分かったが、未来に向けてどう応用するべきかがわからない」というものです。
このとき指導にあたっているマネージャーが、自分の経験や知見を構造的に整理し、部下の経験に当てはめて、物事全体の関係性から
課題を見つけて指導できれば、部下の「経験学習」*サイクルが効率化し、飛躍的に部下のスキルや学習能力が高まります。
*デービッド・コルブ(1984)が「実際に経験した事柄から学びを得るプロセス」を経験学習モデルとして理論化したもの
参考記事:あなたの部下は、経験を学びにつなげられていますか?
マネージャーによる「構造化」された情報による指導によって、部下には明確に、論理的に伝わり、理解も深くなります。
つまり、経験による場当たり的な対処法の指導から、「構造化」された理屈に基づく未来に向けた指導へと変貌します。
マネージャーの教えが効果的なものになれば、間違いなく組織の生産性は向上するでしょう。
その起点となるのは、マネージャーが自分の経験や知見を「構造」的に捉えるスキルです。
あなたの会社の悩めるマネージャーには、十分な「構造化」スキルが備わっているでしょうか?
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