ダニング=クルーガー効果 とは?能力の過大評価を克服する方法

ギャップ分析, パフォーマンス評価・設計, 教育評価

ざっくりのあらすじ
1. ダニング=クルーガー効果とは、能力の低い人 が自己能力を過大評価してしまう認知バイアスのことである
2. ダニング=クルーガー効果は、自己と他者の能力を正しく認識できないことが原因で起こる
3. 正しい自己評価には、適切な「ものさし」の理解と使用やメタ認知力の向上が重要
4. 定期的な自己振り返りと他者からのフィードバックで、ダニング=クルーガー効果を克服できる可能性がある

自己評価が高い人

会社で仕事をしていると、この様なタイプの人に出会うことがありませんか?

  • パフォーマンスが低いのに自己評価が高い人
  • 優秀なのに自己評価が低い人

実は、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価する傾向があり、その結果自分で「課題」が見つけられず、パフォーマンス改善の妨げになることがあります。

この現象は心理学者であるデヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって提唱された「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる認知バイアス(認識の偏り)の一つです。
本記事では、「ダニング=クルーガー効果」を教育的観点から読み解き、過大な自己評価を適切な自己評価にするための解決策をご紹介します。

なぜ能力の低い人は自己評価を誤るのか?

ダニングとクルーガーの研究では、能力の低い人が自己評価を誤る理由として、下記の2つがあると報告されています。

1. できない人は「自分」の能力・レベルを正しく(不足していること)認識できない
2. できない人は「他人」の能力・レベルも正しく認識できない

これだけを見ると何か絶望的な(?)気持ちにもなりますが、ダニングとクルーガーは「その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる」とも言っています。

正しく自己認識できるようになるためにはどうすれば良いのか?

先にご紹介したダニングとクルーガーが報告した「その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる」を、教育的な観点で考えると、以下のように言い換えられそうです。

「その能力について訓練を積むことによって“あるべき姿”を正しく認識できるようになれば、“できるようになる”とまではいかなくても、まずは自分の能力の欠如を認識できるようになる」

正しい自己認識ができるようになれば、自分の課題を認識し、改善する意識を持つ事ができます。すると、トレーニング等によって自分の課題をクリアし次の段階に進むといった継続的な成長のサイクルを作ることができます。

また、能力の低い人が自己評価を誤る理由として挙げられていた「自分や他人の能力・レベルが正しく認識できない」を言い換えると以下のようになります。

“あるべき姿”への到達度をはかる「ものさし」つまり、評価基準や指標がない、もしくは評価基準や指標が間違っている

よって「正しいものさし」を持つということも重要なポイントになります。

自己評価を正しく行うための、解決策とは?

事例を用いて、自己評価を正しく行えるようになるための方法を考えていきましょう。

【A社の事例】
A社では、トレーニングの一貫で受講者に学習目標への到達度を自己評価してもらっています。商談のロールプレイを行った後、上司などからのフィードバックの前に、自分自身を評価します。A社ではチェックシートを使って自分のロールプレイの自己評価、トレーナー評価を行っています。

A社ではチェックシートという「正しいものさし」を与えることによって、自分の現状を正しく自己認識できるようにしようとしています。
しかしながら、それでも自分の能力を高く見積もる「ダニング=クルーガー効果」は起こります。なぜならば、用意された「ものさし」の意味合いを十分に理解できていない、もしくは自分の現状を俯瞰して捉えることができない場合があるためです。

この「自己評価を正しく行えない」という課題の解決策としては次の3点が考えられます。

1. 「ものさし」の精度をあげる(例:わかりやすいようにチェック項目や評価基準を具体的に書く→教育以外の解決策)
2. 「ものさし」の理解を深める(例:受講者のチェック項目や評価基準の理解を深める→教育による解決策)
3.  メタ認知力を高める(例:フィードバックやコーチングを受ける→教育・OJTでの解決策)

評価 チェックリスト

あなたは、正しく自分の能力を見積もれていますか?

ここまでは能力の低い人にみられがちな、過大評価をどのように解消するかというお話でしたが、「ダニング=クルーガー効果」も悪い側面ばかりではありません。
例えば、「自分はできる!」という過大評価をすることは、一歩を踏み出すことにつながる良い側面もあります。

しかし、経験や年数を積んでいくと新人の時とは異なり、耳の痛いフィードバックをしてくれる人が減ってくるので、定期的に「自分もダニング=クルーガー効果に陥っていないかな?」という視点に立って、自分自身を振り返ることも大切です。

自己評価にチャレンジ!

あなたは、正しい自己評価が出来ていますか?以下の質問で自己評価を試してみましょう。

質問①:あなたが職務で求められている専門スキルは100点満点中何点ですか?
質問②:その根拠は説明できますか?
質問③:第三者や専門家からフィードバックを積極的に求めていますか?

正しい「ものさし」で、正確な自己評価を

ダニング=クルーガー効果を理解し、適切な自己認識を育むことは、個人の成長と組織の発展に不可欠です。正しい「ものさし」の活用と継続的なフィードバックを通じて、より正確な自己評価と効果的な能力開発が可能になります。

社員が出来ていないことを認めず過大な自己評価を行っている、会社で使っているチェックシートなどが正しい「ものさし」となっているのか不安、マネージャーなどのコーチングスキルに不安があるなど、社員の能力育成に関するご相談は、お気軽にリープ株式会社までご相談ください。

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