できない人はなぜ自分の能力を高く見積もってしまうのか?

ギャップ分析, パフォーマンス評価・設計, 教育評価

トレーニングの一貫で受講者に学習目標への到達度を自己評価させることがあります。

例えば、商談のロールプレイを行った後、フィードバックの前に自己評価をしてもらうような場面をイメージしてください。
そんな時に、ロールプレイは残念な結果だったのに、自己評価が高めな人はいませんか?
もしくは、かなり優秀層であるにも関わらず、自己評価低めな人もいるのではないでしょうか?

できない人ほど、自分の能力を高く見積もる現象は学術的にも証明されています。
この認知バイアスの現象を論文の執筆者の名前をとって「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれています。
できない人は自分の能力を高く見積もる傾向にあり、自分で「課題」が見つけられないことから改善するという意識が持てず、
結果として能力が上がりづらいという負のループを引き起こします。

できない人は「自分」も「他人」の能力も正しく認識できない

「ダニング=クルーガー効果」の生みの親、ダニングとクルーガーは、できない人は自分の能力を高く見積もってしまう理由として
下記の2つがあると報告しています。

1. できない人は「自分」の能力・レベルを正しく(不足していること)認識できない
2. できない人は「他人」の能力・レベルも正しく認識できない

これだけを見ると何か絶望的な(?)気持ちにもなりますが、
「その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる」とも言っています。

正しく自己認識できるようになるためにはどうすれば良いのか?

「その能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる」という事を、教育的観点で考えると、
「その能力について訓練を積むことによって“あるべき姿”を正しく認識できるようになれば、“できるようになる”とまではいかなくても、
まずは自分の能力の欠如を認識できるようになる」ということではないかと考えます。
そして正しく自己認識できるようになれば、自分の「課題」を認識できるので、改善する意識を持つ事ができるという好循環をまわすことができます。
また「自分や他人の能力・レベルが正しく認識できない」を言い換えると、“あるべき姿”への到達度をはかる「ものさしがない」
もしくは「ものさしが間違っている」という事になります。
よって「正しいものさし」を持つということも重要なポイントになります。

あるべき姿への到達度をはかれる「正しいものさし」を用意するだけでは不十分?

初めにご紹介したロールプレイの事例に話を戻します。
この事例ではチェックシートを使って自己評価、トレーナー評価を行っていました。
これはチェックシートという「正しいものさし」を与えることによって、自分の現状を正しく自己認識できるようにしようと
するためのものです。
しかしながら、それでも自分の能力を高く見積もる「ダニング=クルーガー効果」は起こります。
なぜならば、用意された「ものさし」の意味合いを十分に理解できていない、もしくは自分の現状を俯瞰して捉えることができないからです。
この問題の解決策としては次の3点が考えられます。
→解決策のサポートサービスについて

1. 「ものさし」の精度をあげる(例:わかりやすいようにチェック項目や評価基準を具体的に書く→教育以外の解決策)
2. 「ものさし」の理解を深める(例:受講者のチェック項目や評価基準の理解を深める→教育による解決策)
3.  メタ認知力を高める(例:フィードバックやコーチングを受ける→教育・OJTでの解決策)

あなたは正しく自分の能力を見積もれていますか?

ここまではできない人の過大評価をどのように解消するかというお話でしたが、
「ダニング=クルーガー効果」も悪い側面ばかりではありません。
例えば、「自分はイケてる!」と勘違いすることで、一歩を踏み出すことにつながる良い側面もあります。
とはいえ、経験が増えてくると耳の痛いフィードバックをしてくれる人が減ってくるので、
定期的に「自分もダニング=クルーガー効果に陥っていないかな?」という視点に立って、自分自身を振り返ることも大切です。

あなたは自分の能力を正しく見積もれていますか?
あなたが職務で求められている専門スキルは100点満点で何点ですか?
その根拠は説明できますか?
第三者や専門家からフィードバックを積極的に受けてみませんか?

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