目標設定の仕方によって部下の行動が変わる! 曖昧な目標を具体的にして行動変容を促進しよう

OJT, インストラクショナルデザイン, 人材育成, 学習支援, 教育設計

2024年10月17日更新

ざっくりのあらすじ
1. 部下の行動が変わらない原因は、しばしば曖昧な目標設定にある
2. 目標は観察可能な行動で表現し、評価条件と合格基準を加えて具体化する
3. 明確な目標設定をすることで次の行動が明確になり、部下の行動変容を促進できる

管理職、リーダー職のみなさんにおかれては、日頃の部下の指導育成の中で、スキルを指導したりミスを注意したりしてもなかなか変わらない部下の行動を眺めながら、

「なんで行動しないんだろう」
「なんでできるようにならないんだろう」

というモヤモヤした気持ちを抱くことが、あるのではないでしょうか。

事あるごとに指導しているにも関わらず部下の行動が変わらないという“行動変容”に関するお悩みは、上司のみなさんや会社が設定しためざすべき目標設定に原因があるのかもしれません。

例えば、
「製品情報を理解する」
「顧客視点で提案する」
「ニーズを引き出す質問をする」
などを目標としたり、部下にそのスキルを指導したりすることはよくあるのではないかと思います。

しかし、これらを目標として改めて考えると、なんだか “ふわっと” していませんか?

目標設定の落とし穴

「製品情報を理解する」といいますが、具体的に「理解した」とはどのような状態でしょうか?
部下は何がどれくらいできていれば、目標を達成したとみなすことができるでしょうか?
このような観点が明確でないものは ”あいまいな” 目標だといえるのです。

目標があいまいだと、行動を変えようにも次に何をすべきかがわかりません。結果、行動変容に結びつきにくくなります。
逆に言えば、部下が目指している目標をより具体的にしてあげることで、行動変容が起きやすくなるのです。

そこで今回は、部下(あるいはその目標を承認し達成するための指導を行う上司)が、行動変容の起きづらい、あいまいでふわっとした目標を設定してしまっていないかを確認する3つのチェックポイントをお伝えします。

ご紹介するチェックポイントは、インストラクショナルデザインという教育設計の理論における「学習目標の明確化の3要素」の考え方に基づいています。
インストラクショナルデザイン自体が、”学習者をどのように学ばせるか”、“できるようにさせるか”を考える学問です。
部下の行動変容を促す目標設定のために、きっとお役立ていただけると思います。

ご参考:
インストラクショナルデザイン ~教え方にはルールがある!?~
育成や学習がうまくいかないのは「目標に問題アリ」かも!?

チェックポイントに一つでも当てはまっていたら行動変容しづらい目標設定になっているかも……。
ぜひチェックしてみてください。

行動を起こせる目標になっている? 3つのチェックポイントを確認!

チェックポイント①: 目標にあいまいな動詞を使っていないか?

目標設定で最もやってしまいがちなのは、「○○を身につける」「○○を理解する」のような、あいまいな動詞で目標を表現することです。
あいまいな動詞とは、知る、覚える、理解する…など、知識やスキルのインプットを表す動詞だと思っていただければイメージしやすいかと思います。これらの言葉は、実際にその知識や技能が身についているかが判断しにくいものです。

改善方法: 目標は観察可能な行動で表現しよう!

目標を明確にするためには、具体的な行動で表現することがポイントです。具体的な行動とは、先ほどのインプットを表す動詞に対して、言う、書く、行う、実演する…など、知識やスキルのアウトプットを表す動詞が該当します。
とくに、他者から見てその目標が達成できているか可能かを観察・判断可能な表現になっているかどうかを意識して言葉を選ぶことが重要です。

△ 知識やスキルのインプットを表す動詞 〇 知識やスキルのアウトプット(具体的な行動)を表す動詞
  • 知る
  • 覚える
  • 身に付ける
  • 理解する
  • 学ぶ  など
  • 言う
  • 説明する
  • 行う
  • 実演する
  • 書く   など

 

 

例)
△ 製品情報を理解する

○ 製品情報を正しく説明できる

チェックポイント②: 目標に評価条件が含まれているか?

評価条件とは、目標を達成できたかどうかを判断する際に前提となる条件のことです。
たとえば、先の例で挙げた「新製品について正しく説明できる」で考えてみると、資料を見ながら説明してよい/資料を見てはいけない、社内で上司を相手に説明する/実際の現場で顧客相手に説明する、など、状況や場面によって目標達成の難易度や必要なスキルは変わってしまいます。
これはつまり、行動変容の内容のレベルがあいまいであることを意味します。

改善方法: 評価条件を加えよう!

その行動変容はどんな場面や状況で、どんな道具を使って行われるべきものなのかを考え、以下のような評価条件を加えることで、目標がより明確になります。

【評価条件の観点】

  • 資料参照の可否
  • 場面や状況の制約  (例:特定の顧客設定での商談ロールプレイにおいて など)
  • 使用する道具の制約 (例:指定のソフトウェアを使用して など)
    など

例)
△ 製品情報を正しく説明できる

○ 実際の顧客に対して、資料を使いながら製品情報を正しく説明できる

チェックポイント③:合格基準を定めているか?

最後のチェックポイントは、何をもって目標を達成できたと判断するか、という合格基準が目標に含まれているかどうかです。目標達成の客観的な合格基準がないと、行動変容したということを確認できませんし、“部下は行動変容しているつもりでも上司から見てそれが感じ取れない”というありがちな認識齟齬が生じたりします。

改善方法: 合格基準を加えよう!

チェック項目を作成したり、パフォーマンスを測ることのできるルーブリックなどの評価指標を用いるなどして合格基準を明確にすることで、実際に行動変容が起きたかどうかを判断することができます。他者からみて行動変容が起きている(目標を達成している)と判断できる合格基準を設けることがポイントです。

ご参考:
成果につながる人材育成システム「スキル評価」
パフォーマンスの状態を可視化できる評価指標「ルーブリック」

【合格基準の観点】

  • テストの合格点  (例:80/100点以上で合格 など)
  • チェックリストで満たすべき項目数  (例:15/20項目を満たして合格 など)
  • 制限時間  (例:1分以内に動作を完了できて合格 など)
    など

目標を明確化して、変えるべき行動の焦点を絞ろう


いかがでしたか?
目標を明確にすることは、行動をどのように変えるべきか、次にとるべき行動は何かを明確にすることにつながります。

チェックポイントと解決方法のまとめ

△ 知識やスキルのインプットを表す動詞 〇 知識やスキルのアウトプット(具体的な行動)を表す動詞
  • 知る
  • 覚える
  • 身に付ける
  • 理解する
  • 学ぶ  など
  • 言う
  • 説明する
  • 行う
  • 実演する
  • 書く   など

 

 

例)
△ 製品情報を理解する

○ 実際の顧客に対して、資料を使いながら製品情報を正しく説明し、チェック項目をすべて満たすことができる
(チェック項目の観点の例:使い方、価格、メリット/デメリット など)

「指導の効果が出ない」、「行動が変わらない」など、部下の行動変容がうまくいかないときには、部下が目指すべき目標が“ふわっとした目標”になっていないか、ぜひ、チェックしてみてください!

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