教え方にはルールがある!?「インストラクショナルデザイン」

OJT, インストラクショナルデザイン, 人材育成, 学習支援, 学習課題分析, 教育設計

研修など人材育成を考える際には「What?=何をできるようにするのか?」と「How?=どうやってできるようにするのか」の2つの要素を考慮する必要があります。インストラクショナルデザインとは、「何を(What)できるようにするのか?」を明確にしたうえで、「どうやって(How)できるようにするのか」をルールに基づいて体系的に考えることにより、効果的・効率的・魅力的な教育プログラムを作成するための方法論です。インストラクショナルデザインを取り入れることにより、講師の経験値に頼らず、教育のゴールとして設定した「学習目標」を達成するための育成プランを立てることができるようになります。「過去に経験がある研修は企画を考えられるけど、経験がない研修はどうやって考えてよいのか全く分からない…」という教育担当者の方は意外と多いのではないでしょうか?
そんな方にもインストラクショナルデザインの考え方はきっと役に立ちます!
新たに教育担当になって「何から手をつけてよいのかわからない…」という方も、「もっと素敵な研修にしたい!」という教育担当者の方も、受講者だけでなく組織にとって成果につながる人材育成の実践に役立てていただきたいと思います。

ー目次ー
1. インストラクショナルデザインって何?
2. インストラクショナルデザインが注目を集める理由
3. インストラクショナルデザインが目指す「効果・効率・魅力」な教育とは?
4. インストラクショナルデザインの基本形「3要素の整合性をとる!」
5. 成果につながるインストラクショナルデザイン、導入してみませんか?

インストラクショナルデザインって何?

インストラクショナルデザインとは、教育を中心とした学習活動の効果・効率・魅力を高めることを目指したシステム的なアプローチに関する方法論の総称です。例えば、あなたが研修プログラムを作成するときには、前述のように「何を(What)、どうやって(How)できるようにするのか」について考えるかと思います。そのような場面において活用できる方法論がインストラクショナルデザインです。研修プログラムの企画において考慮しなければならない点として、受講者の特徴や置かれている学習環境、使えるリソース(例:予算や人員など)のように様々な制約条件があります。研修を企画する人は受講者の特徴と制約条件を踏まえた上で、効果的で効率的、そして何よりも魅力的な研修プログラムを考える必要があります。インストラクショナルデザインを担う人をインストラクショナルデザイナーといいます。

インストラクショナルデザインが注目を集める理由

インストラクショナルデザインは第二次世界大戦中にアメリカで生まれました。
アメリカ軍の兵士や科学技術者の効果的・効率的な訓練方法としてインストラクショナルデザインが考え出されたのです。
その教育技法が企業内教育において活用されるようになったと言われています。
日本では2000年頃になって企業内教育を中心にeラーニングの導入が進んだ際に、インストラクショナルデザインが注目を集めました。なぜならば、「eラーニングでこれまでの教育の問題を解決できる!」と思っていたところ、期待外れの結果に終わってしまうことが多かったからです。このような問題を解決するための手法としてインストラクショナルデザインが注目を集める結果となりました。
昨今では、これまで集合研修で行ってきた研修を遠隔で実施しなければいけない場面も増えてきました。集合研修で実施してきた内容をそのままZoomやTeamsなどのWEB会議室システムを使ってバーチャルクラスルーム形式で実施しても、かなりの確率でうまくいきません。このように研修を提供する制約条件が変わり、どのように研修プログラムを組みなおすべきか考えなければいけないときにも、インストラクショナルデザインは役に立ちます。

インストラクショナルデザインが目指す「効果・効率・魅力」的な教育とは?

ここまでにインストラクショナルデザインが目指すものとして「効果・効率・魅力」というキーワードが何度もでてきましたが、
それらは具体的に何を指しているのでしょうか?ここではそれぞれについて詳しく解説していきます。

効果…研修が受講者、組織の成果につながる

せっかく研修をやったからには何か事態が好転することを期待すると思います(研修を提供した人だけでなく、受けた人も!)。
学びにおける期待とは、受講者が一定の成果を出してくれることです。例えば、営業担当者に対して商談スキル研修を実施した場合、学んだ内容を受講者が理解し、実務において商談スキルを実践することが求められます。その上で、組織全体の成果である業績アップが研修と関係性があることを確認する必要があります。

効率…研修を提供する人も受講者も省エネ型

インストラクショナルデザインは「なんだかやたらと手間がかかって取り入れ辛いな~」と思っている人がいらっしゃるかもしれませんが、インストラクショナルデザインでは研修を提供する人と受講者の両者が時間的・物理的にも手間をかけすぎずに成果を追求する「省エネ型」を目指しています。
「研修を提供する人」は研修の準備をする際に新しい教材をゼロからつくるのではなく、これまで用意した教材を再利用できないかを考えてみます(注意:同じ研修を実施する意味ではありません!)。いまあるリソースを有効活用するという意味では、市販の書籍を配布して活用する方法もあります。
「受講者」にとっては本当に必要な学習課題に絞られたものを短時間で学び、成果につなげることができれば、とても効率的です。
熱心な「研修を提供する人」である程、ついつい内容をたくさん盛り込みすぎてしまったり(メガ盛り研修!)、オリジナリティを追求するあまりコンテンツすべてを手作りしたくなってしまうこともあると思いますが、本当に必要な内容に絞って 、今あるリソースを活用して、全体設計を工夫することで、最大限の成果を狙ってみましょう。

魅力…受講者が「もっともっと学びたい!」と思って継続する

どんなに効果と効率を上げても、やらされ感が蔓延しているものは長続きしません。
受講者に「もっともっと学びたい!」という継続動機を与え、「できなかったことが、ここまではできるようになった!」と達成感を実感させることが学びにおける魅力です。
また「研修を提供する人」が楽しいと思わないものは、「研修を受ける人」も楽しいと思いません。
学び手と教え手の両者にとって魅力的な研修であることが、長続きする学びのためには重要なポイントですが、この点はなおざりにされがちなので、注意しましょう!

インストラクショナルデザインの基本形「3要素の整合性をとる!」

インストラクショナルデザインには教育に携わるあなたが活用できる理論やモデルがたくさんあります。
そのすべてに共通している最重要ポイントをシンプルに表現すると、こちらの図にある3つの要素(学習目標、評価方法、教育内容)の整合性を揃えることが起点にあります。

学習目標…ここでは何を学んでほしいのか?

研修は誰が何時間それを受けたかではなく、その研修で「何を学んだか」で効果を確かめます(履修主義ではなく習得主義)。
その研修で学んでほしい内容が「学習目標」です。
この学習目標は後出しじゃんけんではなく、最初から受講者に提示されているのがインストラクショナルデザインでは良いとされています。「学習目標が大切であることは理解しているし、受講者にも研修のはじめにちゃんと提示しているよ」という方が多いのではないかと思います。
その学習目標は何回提示していますか?「研修の開始時に1回のみ」という方はいませんか?
学習目標を受講者に提示する理由は目指すところを共有することで、教え手はもちろん、受講者にも自分たちはどこに向かっていているのかに神経を集中して欲しいと考えているからです。研修の最初と最後はもちろん、研修の途中でも提示し続けて、常に意識させるようにしましょう。

評価方法…学んだかどうかをどのように判断するのか?

同じ学習目標でも習得するためにかかる時間は、人によって異なります。
同じことでも半日で身につけることができる人もいれば、3日間かかる人もいます(当たり前ですね!)。
受講者ごとに必要な時間をかけて学んでもらえるようにするためには、受講時間ではなく、研修の成果つまり学習目標への到達度で修了の可否を判断する必要があります。
そのために必要なのが「評価方法」です。ところが「評価方法」と「学習目標」が一致していないケースが多くあります。
評価は手間がかかるということで実施していないケースはもちろんですが、評価を実施していたとしても学習目標の一部しか評価していない(評価しているつもりになってしまう)ようなケースが意外と多くあります。評価が実践できないお悩みはあるかもしれませんが、せっかく受講者に意識してもらった学習目標が習得できたかどうかは確認して、本人に「合格!」とフィードバックしたいところです。

教育内容・方法…学びをどのように支援するのか?

学習目標と評価方法が決まったら、最後に何をどのように教えるか(教育内容・方法)を考えましょう。
例えば「営業部全員を集めてロールプレイ研修をしよう!」のように研修の企画をスタートさせていませんか?
ここで紹介した3つの要素の整合性を取るための一番のコツは、教育内容や方法の検討からはじめないことです。
学習目標と評価方法が決まってから、どの教育方法が最適かを決める必要があります。
山頂が「学習目標」だとしたら、山頂に登るためのルートは複数あります。どのルートが最適なのかは、山を登る受講者のレベル感や、学習環境の制約条件によっても変わります。先程の事例で言えば、「全員集めてロールプレイ!」以外の方法(ルート)もあるはずですし、そもそも受講者ニーズに合致する学習目標を考えれば、ロールプレイという方法では到達できないかもしれません。

このように書くと当たり前のことのように思えますが、教育方法から研修企画がスタートすることは、とても多くあるのが実情です。営業部などのステークホルダーから、教育方法で研修のリクエストがくることもあると思います。しかしながら教育内容や方法が目的として先行してしまうと、3つの整合性がとれず、成果がでない(成果がはかれない)研修になってしまいます。登る山頂(学習目標)が決まっていないのに、どのルートをとるべきか考えている状態と一緒ですから当然ですよね。定期的に「今回の研修は何のための学びなのか?」という原点に立ち返りながら設計をしていきましょう 。

成果につながるインストラクショナルデザイン、導入してみませんか?

ここまでインストラクショナルデザインについてお伝えしてきました。
3つの要素の整合性をとってもすぐにうまくいくものではありません。
評価した結果を踏まえて、改善しながらブラッシュアップしていきます。
このような「より良くするために繰り返すシステム的なアプローチ」をインストラクショナルデザインは大切にしています。
その際に活用できる理論やモデルはたくさんあります。
「インストラクショナルデザインは導入してみたいけど、自社の場合、どんな風に導入したら良いのかわからない…」という方はお気軽にリープまでご相談ください。
あなたの組織に合った導入プランを弊社のコンサルタントチームが一緒に考えます!

インストラクショナルデザイン講座について

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