社員の育成の「効率的」な設計方法とは?

OJT, インストラクショナルデザイン, 人材育成, 可視化・体系化, 学習支援, 学習課題分析, 研修効果

企業の研修担当の方や、部下の育成を担っている上司の方々にとって、
研修が時間通りに終わらない…ということで悩まれたことが1度はあるのではないでしょうか?
社会人経験の長い方は、受講者としてそのような研修を経験したことがあるかもしれません。
時間内に終わらない要因はタイムマネジメントの問題と思う方が多いかもしれませんが、
「教える内容を取捨選択できないため余計な内容が入っている」ということはありませんか?

そこで今回は、時間通りに終わらない問題の手助けとなる研修内容の整理の方法についてご紹介したいと思います。
教育・研修の効果・効率・魅力を高めるための手法インストラクショナルデザインの観点で今回は「課題分析」を用いながらお伝えします。
課題分析をすることで、研修の受講者や育成対象の部下といった学習者が習得しなければならない必要最小限の内容が明らかになる、内容の抜け漏れを防ぐ、効果的な教える順番を決めやすくなる、などのメリットがあります。
⋙インストラクショナルデザインとは?

「学習目標」と「課題分析」とは

育成プランを立てる際にまず、学習者に育成後どのような状態になって欲しいか目標やゴールを立てることから始めます。
この“育成が終了した時点で学習者が達成しているべき学習の到達度”のことをインストラクショナルデザインでは「学習目標」といい、学習成果の質によって以下の表の分類に分けられます。

そして学習目標に到達するまでに必要な教える内容やその優先順位を洗い出すために、次に「課題分析」を用います。これは、学習成果の達成に必要な要素とその要素間の前後関係を明らかにするために行う分析で、学習成果の種類に応じて、以下の分析手法に分けられます。

4つの分析手法のうち1つの事例を紹介いたします。
弊社では最近、「評価」・「分析」・「育成」の3つのサービスの軸における評価パートを担っている部署に新人が入社しました。
私が所属する部署であり自身がリーダーとして部下の指導をしましたので、これを事例にしてお伝えしたいと思います。
⋙「評価」・「分析」・「育成」の3つのサービスとは?

この部署では、営業担当者の商談を評価した結果をもとに納品レポートを作成して、お客様へのレビュー会を実施しています。
そこで、新メンバーに「お客様に対して納品レポートの内容を発表することを想定した研修」を行いました。
導入の3日間の研修では、発表の流れを一通りできるようになるため学習目標を「評価した結果の簡単な集計と納品レポートを発表できる」としました。
しかし予定していたよりも研修に多くの時間がかかり、納品レポートの作成は達成したものの、発表が不十分で目標を達成することができませんでした。
教える内容に問題があったのではないかと思い、課題分析図を使ってゴールを分解し見える化してみました。

振り返り

まず実際の3日間の時間割がどうだったのかを改めて振り返ります。

*1日目:評価指標のレクチャー、納品レポートのレクチャー、評価の練習
*2日目:集計方法のレクチャー、納品レポート作成方法のレクチャー
*3日目:納品レポートの作成、自己練習、発表

それから、プレゼンテーションの学習成果は運動技能であるため「手順分析」を活用してみます。

上記の課題分析図で分解した内容ができるようになるには、次のような研修内容であるべきであったのではないかと考えます。

*1日目:評価指標のレクチャー、納品レポートのレクチャー、評価の練習
*2日目:集計方法のレクチャー(簡易)、納品レポート作成方法のレクチャー、手本を見せる
*3日目:納品レポートの作成、STEPごとのレクチャー、練習&フィードバック、発表

実際の時間割とあるべき時間割を比較してみて見えてきた問題点と改善点が次の通りとなります。

問題点

・プレゼンのSTEPごとの説明を含んでいなかった
・一度通してプレゼンを実践しフィードバックをする時間を入れていなかった
・「集計方法の説明」で関数や応用方法について説明をしすぎていた

改善点

・プレゼンのSTEPごとのつながりの説明をする
・プレゼンの練習とフィードバックを発表前に入れる
・集計の手順のみに絞り、関数の機能については業務をしながら教える(この研修内容からは削除する)

 

まとめ

課題分析をすることで、学習内容とその優先順位が整理され無駄のない育成プランを組み立てることができるので、時間内に最適な研修をすることに役立つのではないでしょうか。
教える必要のある内容を決められた時間内に研修できれば、学習者、育成担当者ともに他の業務に使う時間を確保することなどができると思います。
これから新人配属などがあり、新たに育成担当になられた方は、お困りの際にぜひ「課題分析図」を思い出してください!

 

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