プロジェクトベースドラーニング 企業に必要な問題解決型学習

パフォーマンス評価・設計

PBLという言葉をご存知ですか?

プロジェクトベースドラーニング=問題解決型学習と言われる学習方法で、アメリカの教育学者のジョン・デューイ がまとめた学習理論の一つです。

なお、PBLは、“プロブレムベースドラーニング”の略としても使われますが、今回はプロジェクトベースドラーニング(プロジェクト学習)を取り上げたいと思います。

ここで、まずPBLについて定義したいと思います。
京都大学溝上教授の著書「アクティブ・ラーニングとしてのPBLと探究的な学習」のなかで、PBLを以下のように整理されています。

実世界に関する解決すべき複雑な問題や問い、仮説をプロジェクトとして解決・検証していく学習のことである。学習者の自己主導型の学習デザイン、指導者のファシリテーションと問題や問い、仮説などの立て方、問題解決に関する思考力や協働学習等の能力や態度を身につける

PBLは三粒(人材開発・組織開発・問題解決)美味しい!

もう少し紐解くと、このPBLによって得られるものは、以下の3つです。

♦人材開発:複雑な課題に対応できる人材育成

学習者は、単なる知識やスキルを習得するのではなく、実際の問題解決に直面した際に発揮される思考力や実践力など応用スキルが学習できる。

♦組織開発:学習するチームやステークホルダーと協働できる組織づくり

複数メンバーやその課題に関わるステークホルダーと協働する中で、共に問題解決に向かう姿勢やお互いをサポートする関係性を築くことに繋がり、強固な基盤の組織が醸成される。

♦問題解決:実際のビジネス上の問題解決

PBLで取り扱う問題を、実際にビジネスの現場で困っている課題にすることで、これまで解決できなかった問題に解決の糸口を見つけることができる。さらに、この学習から得られたナレッジを、他のビジネス上の問題解決に転用することができる。

つまり、このPBLを取り入れることで社会人として身につけるべき能力を育成できるだけでなく、学習する企業文化の醸成、加えて実際の問題解決までできるという、企業にとって美味しいことがたくさんある学習方法です。

このPBLが、なぜ今企業内の学習方法として注目されているかというと、「正解のない課題を通して、問題解決へのアプローチ方法を身につける」ことができるからです。
今まさに、ビジネス環境は VUCA……Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の時代、企業が直面する先行きが不透明な中、様々な環境変化に適応するための人材や組織が必要です。
これまでの「正解・解答のある課題に取り組み知識、技能を得る」という学習スタイルでは到底、この時代に太刀打ちできないわけです。
これまでの過去のベストプラクティスは通用せず、誰も見出したことがない解決策を検討、取り組まねばならない状態にあるビジネスの現場において、PBLはまさに今求められている学習法なのです。

PBLにおける7つの学習ステップ

では、問題解決型学習であるPBLの流れをご紹介します。以下に挙げる7つの学習のステップを体験することで、学びが促進されていきます。

① ビジネス上の問題を選定し、さらに、その問題における「真の問題」を深掘りする
② 「真の問題」に対する解決策を実践的・論理的手法によって検討する
③ 問題の深堀、解決策の検討を行うために、お互いがリーダーシップを発揮し協働する
④ 上記に必要な知識や情報のインプットを行い、自律的に学習を進める
⑤ 新たに獲得した知識を、協働作業の中で取り上げている問題の解決に向けて適用する
⑥ 学習したことやプロジェクトの進行を振り返り、習得した知識や情報、スキルを体系的に整理する
⑦ PBL以外のビジネス環境において、学習したことを適用する

PBLの学習期間内に、学習者がこのプロセスを経るように進めることが重要です。
これらを体験することによって、効果的に学習が行われます。

参考:効果的・効率的・魅力的な教育プログラムを作成するための方法とは

企業教育の中にPBLを取り入れてみよう!

具体的にPBLを企業内に導入する際には、教育プランを丁寧に設計する必要があります。⋙教育プランの設計に役立つ方法とは?
学習者の選定や部門内外との調整、スケジュールや学習目標とその学習評価などです。

そんな中で特に重要なことを3つ挙げさせて頂きます。

① 適切な学習者選定とその学習環境を整えること
② PBLのプログラムを円滑に進めるためのラーニングファシリテーターの存在
③ PBLで習得したことを、学習者がビジネス環境の中で発揮できているかを評価、モニタリングすること

PBLを進めるためのプログラムだけ用意しても、成果につながる学びは得られません。上記を意識しながら企業内に取り入れることによって、冒頭に挙げた「人材開発・組織開発・問題解決」の三粒美味しい学習を実現できます。

多くの企業でも、様々なタスクフォース、プロジェクト、プラクティスグループなどの名称で、人材開発、組織開発の効果を狙ったプログラムが行われていることと思います。これらの企画を、PBLとして再度、設計し直して、よりパワフルな人材育成を実現されてはいかがですか?

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