マネジャーのOJTにおける指導スキルに関する代表的なお悩み2つ。

OJT, コーチング, パフォーマンス評価・設計, 人材育成, 学習支援

良くいただくお悩み2つ

 

①コーチングを進めて貰いたいがコーチングスキルを知らないこともあって、一方的に頭ごなしに指導しちゃうマネージャーが多くて困っているんですよね。

②マネジャーにコーチングを学ばせはじめたら、「とにかく質問」「質問しなきゃ」と部下に気を使ってばっかりになってしまって、指導ができなくなっていて困っているんですよね。

よく、こんな2つの事象を伺います。

そして、コーチングスキルの課題が議論になることが多く、弊社にも、その評価や学習コンテンツのお問い合わせを多くいただきます。
ちなみに、あなたの組織は、どちらでしょうか?

現場における上司の指導スキルの問題は、どこにあるのか?

部下指導と考えたときに、直感的に「コーチング!」と思いがちですが、コーチングスキルが理解されていない、またはそのスキルが発揮されていないことが要因であるのと同時に、もう一つ、そもそも、部下を指導するティーチングスキルも備わっていないのではないでしょうか?

確かに、これまでビジネススキルとして、「教える」スキルは、改まって学んできていないのが現状です。
にもかかわらず、「ティーチングはできるのに、コーチングができない」と現状を捉えるのは少し乱暴かもしれません。

ということで、ビジネススキルとしてティーチングスキルを身につけていないという前提に立って、OJTによる部下指導の仕組みを考えなくてはいけませんし、マネジャーを育成する側も、この現実を捉えて、コーチングスキルと同様にティーチングスキルを学ばせる必要があります。

ちなみに多くの方が、コーチングにせよ、ティーチングにせよ、それぞれの一つの要素だけを取り上げ、そのスキルができるとか、できないとかを議論することがあります。例えば、コーチングであれば、「部下の話を聞くための質問のスキル」とか、ティーチングであれば、「わかりやすく説明するスキル」とか短絡的に捉えてしまうことが多いのです。

それは要素として間違っていませんが、全てではありません。

コーチングにしても、ティーチングにしても、それらを構成するスキル要素やプロセスなど全体構造を捉えなくてはいけませんし、その全体構造における強みや弱み、その関係性を理解する取り組みが重要です。

そこで改めて、ティーチングスキルとして応用できるフレームワークを、その全体像とともに、みなさんにご紹介したいと思います。
わかりやすく伝える、つまり「教える」ために必要なスキルとして活用していただければ、きっとあなたは、部下から「教え上手」と言われます!

ガニェの9教授事象(Nine steps of instruction)

部下などの学習者の学びを助けるための指導者による行動は数多くありますが、アメリカの教育心理学者のガニェ(Robert M. Gagne)は、その行動を「教える」という一連の流れとしての9つのグループに整理しました。

■「ガニェの9教授事象(Nine steps of instruction)」■

【導入】
1.学習者の注意を喚起する(情報の受け入れ態勢を作らせる)
2.学習者に目標を知らせる(頭を活性化し、重要な情報に集中させる)
3.前提条件を思い出させる(今までに学んだ関連事項を思い出させる)
【展開:情報提示】
4.新しい事項を提示する(何を学ぶかを具体的に知らせる)
5.学習の指針を与える 学習活動(意味のある形で頭に入れる)
【展開:学習活動】
6.練習の機会をつくる(頭から取り出す練習をさせる)
7.フィードバックを与える(学習状況をつかみ、弱点を克服させる)
【まとめ】
8.学習の成果を評価する(成果を確かめ、学習結果を味わわせる)
9.保持と転移を高める(長持ちさせ、応用がきくようにさせる)

何やら難しいですよね。
今回は、これを3つのパートに分けてご紹介したいと思います。

最近では、”社内YouTuber” 的に動画コンテンツの作成や編集などに取り組むことも多くなっていますが、ここではそのような「動画コンテンツの作り方を教える」を例として示しながらご説明します。

■導入

1.学習者の注意を喚起する(情報の受け入れ態勢を作らせる)
2.学習者に目標を知らせる(頭を活性化し、重要な情報に集中させる)
3.前提条件を思い出させる(今までに学んだ関連事項を思い出させる)

これらの3つによって、学習者は学習内容に興味を持ち、ゴールを確認し、そこへ向かって進む心と頭の準備が出来ます。

動画作成の事例で考えてみると、いきなり編集ソフトを持たせて「編集してください」と教えるのではなく、YouTubeなどを見せて、どんな動画に関心があるか、動画のストーリーや構成にはどんなパターンがあるか、自分たちが作るならどんなものが良いかなどを学習者に質問しながら「それを自分で作れるようになる」と伝えます。
それから、その動画を作成するには、どんなスキルや材料が必要なのか、大まかにどんな手順があるのかを想像させます。動画の素材はどんなものがいいのか? 一番シンプルに作るにはどうすれば良いか? 動画で強調したいことは何か? などを共有し、興味を持って貰います。

■展開:情報提示

指導のメインパートである展開は、インプット部分とアウトプット部分に分けられます。
4.新しい事項を提示する(何を学ぶかを具体的に知らせる)
5.学習の指針を与える 学習活動(意味のある形で頭に入れる)

例えば、繰り返しやってみせたり、注目すべきポイントを示したり、問いかけたり、ヒントを与えたり、質問に答えたり、説明したりします。導入部分で示した目標や関連知識が理解を助けることもあります。こうして、学習者は理解できないものを含んだ内容が理解できるようになります。

もう一度、動画作成の事例を挙げるとすれば、不要シーンのカット方法、オープニング動画の挿入、テロップの入れ方、BGMの音量調整、画面切り替え(トランジション)の挿入方法など、動画作成で必要な操作方法にどのようなものがあるのかを確認・インプットします。

その上で実際に操作をしていきますが、例えばテロップの入れ方については、PowerPointなどのスライドを作るイメージで行えばよいことを伝えたり、テロップの入れ方や見やすさをテレビ番組や有名なユーチューバーの例を挙げて教えてあげたりするなど、学習者の記憶に残りやすい形にして、わかりやすく伝えます。

■展開:学習活動

6.練習の機会をつくる(頭から取り出す練習をさせる)
7.フィードバックを与える(学習状況をつかみ、弱点を克服させる)

もし、この2つを行わなかったら、学習者は自分の理解が正しいかどうかが分からないまま、また別の新しい内容を理解することになります。
指導者の立場からも学習者がどれぐらい理解したのかを確かめることが出来ませんから、教えにくいと思います。
時に、この展開部分を基礎的なものから応用的なものになるように、段階的にステップアップさせていきます。「分かる」だけの状態から、練習とフィードバックによって「できる!」ようになります。

では、再度動画の事例に当てはめて考えてみましょう。(学習者が)ある程度操作について理解できた(インプットできた)ら、実際に編集の練習をして操作に慣れていきます。例えば、自分のお気に入りの画像や動画を編集させてみる、練習用のファイルを編集してもらうなどの練習をして編集した動画作品を実際に作ります。

指導者は、実際に編集してもらった動画を確認したら、学習目標の到達度に基づきフィードバックを行います。
例えば、オープニングの時間が長すぎる、テロップの文字数が多すぎて読みにくくなっている、動画の切り替えがスムーズではないので、こうするとよい、など具体的なフィードバックを行っていきます。

■まとめ

8.学習の成果を評価する(成果を確かめ、学習結果を味わわせる)

評価の方法はいろいろとあります。例えば、その成果物の質をチェックリスト、チェックシートを用いて評価・検証する、パフォーマンスをルーブリックのような評価指標で評価する、などです。
評価を通じて、学習によって何が出来るようになったかを知ることで、学習者は満足感や新たなる課題を得たりするでしょう。

作業手順を覚えたかというテストもありますが、実際に作成したもののクオリティやそれを進めるための業務そのものを評価することが重要です。
時に、評価者は、指導者だけでなく、学習者自身であったり、他の学習者だったり、あるいは、組織外のステークホルダーや顧客などということもあるかもしれません。多様なフィードバック、そして課題を適切に抽出できる評価を心がけると良いでしょう。

9.保持と転移を高める(長持ちさせ、応用がきくようにさせる)

習ったことは使わないと忘れてしまうものです。ですから、早速、いろんな動画を作ってもらったり、また学習したことが他の学習へ応用できるようにしたり、現実の問題解決にも適用できることを伝えます。
「動画」を作れるようになったら、それを使って、新しいサービスコンテンツやもっと長時間の動画などにチャンレンジしてもらうなどです。

ガニェの9教授事象

ガニェの9教授事象を活用してみましょう!

「ガニェの9教授事象」いかがだったでしょうか?

今度学習者として何かを学ぶ機会があれば、「今私がしているのは9事象のどの部分なのか??」を意識しながら授業を受けることでより効果的に学習出来ると思います。
また何かを教える機会があれば、指導方法を考えたり、資料を準備したり、指導者側の教え方を評価したりするときに役立つ考え方だと思います。

コーチングも重要です。
ただ、コーチングが学習者の課題を特定し、その解決を促す導きをリードするものだとすれば、その次のフェーズで、指導者側からの「教える」という支援も期待されてくると思いますので、ぜひ「教える」スキルにも着目して、指導力を向上させていきましょう。

コーチングスキルや、教えるスキルについてのご相談は、お気軽にリープまで!
リープは全力で、企業の教育設計を応援している会社です。

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