【イベントレポート】 測る力が組織を変える~横河電機様の事例より~

パフォーマンス評価・設計, 人材育成, 営業力強化, 学習支援, 教育設計

2022年7月14日、東京国際フォーラムで行われたイベント「ヒューマンキャピタル2022/ラーニングイノベーション2022」内で横河電機株式会社の勝木雅人氏と三枝澄絵氏と弊社・荒木が共同講演を行いました。勝木氏とは「HRカンファレンス2022-春-」でもご一緒させていただきましたが、今回は「測る力が組織を変える! 成果を生む人財育成トランスフォーメーション」と題し、組織の課題をどう可視化すべきか、解決へのロードマップをどのように描くのかを、ディスカッション形式で発表させていただきました。

このブログをご覧の皆様も組織の課題を感じていらっしゃるかと思いますが、横河電機様の回答を参考にしていただけましたら幸いです。

           

 

勝木 雅人(かつき まさと)氏
横河電機株式会社 フェロー ソリューションサービスビジネス担当

三枝 澄江(さえぐさ すみえ)氏
横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネス担当 コンサルティングセンター、インストラクションデザイン Gr長
教授システム学(修士)@熊本大学大学院

写真左より 弊社・荒木、勝木氏、三枝氏

質問1
自社で研修の効果検証をしているのですが、うまく証明できないことが多く、悩んでいます。横河さんはどのような取り組みをして(目に見える)成果を挙げられたのでしょうか。
勝木氏の回答:評価指標と事業目標を紐づけてKPIを設定

我々は人財育成をビジネス目標達成のために実施しています。従って、ビジネス目標を実現するために何ができれば良いのか、仕事の難易度を起点として考えます。ミッションをクリアできるレベルの人が何人いるか、何人にしなければならないのかを検討する際に、やはりルーブリック(評価指標)は欠かせないと思っています。

人員が求めるレベルに達しない場合、どんな研修を行えばよいのか戦略を立てる際に「測る力」は重要で、研修の効果はビジネス実現と連動しているので、効果検証がしやすくなります。

もちろん、ルーブリックがあると課題解決もスムーズになります。全社員をルーブリックで評価すると、(5段階評価中)及第点の「3」が何人いるのか、(平均を上回る能力がある)「4」が何人いるのか把握することができますから、難易度の高い業務が評価が高い人員に割り当てられているか、最適な人員配置ができているかを確認しやすくなります。

横河ではビジネス目標を立て、プランニングを丹念に行っていますが、ルーブリックの値と人員構成を紐づけして中期目標を立てることを徹底して行いました。各部門長、役員が連携してルーブリックと事業目標を紐づけることをKPIとし、事業を推進することで課題の可視化ができたことを実感しています。横ばいだった業績が、毎年昨対18%ずつ伸長するなど、目に見えて組織が変わりました。

もちろん、ルーブリックの導入に至るまでは紆余曲折ありましたが、評価指標の重要性を根気強く説明し、合意して納得してもらうために力を注ぎました。横ばいになっていた業績を回復させるためには、新しいことに挑戦することが必要ですし、意を決して臨んだという背景があったということも合わせてお伝えしておきます。

質問2:
研修プログラムを一時的な取り組みではなく、組織に定着させるためにはどんな工夫が必要だと思いますか?
三枝氏の回答:「カークパトリックの4段階評価モデル」を活用する~レベル3に到達するための環境づくりに注力~

(熊本大学大学院でインストラクショナルデザインを学んだ経験を生かし)「カークパトリックの4段階評価モデル」を活用して、オペレーションを改善しました。

研修の実施直後は、学びがインプットされて「レベル2」に到達します。学んだことが職場でしっかり活かせるよう、「レベル3」につなげていくことが重要だと考えています。もちろん、レベル3に到達するためには、上司や職場側の環境が大きく影響すると捉えています。

ですから、私どもでは研修と並行して学習環境を最適化することにも注力しています。具体的には、「上司が日々の業務を通じて育成を行う」「上司は部下を支援しているか」など、上司側の観点を交えながら、職場を肯定的な学習環境に改善していくアプローチです。学習環境が整えば行動変容が起き、学習の成果を上げやすくなります。そして結果として、学びが定着化していくと考えられます。

職場が肯定的な学習環境であるかを判断するのは難しいので、弊社では現状を把握するために「PLE30」といった指標を用いて、学習環境を評価しています。

個人のスキル評価をルーブリックで行うと同時に、職場の環境をPLE30でといった形で評価すること重要で、双方の現状を可視化し、必要な介入策を立てていくことが、学習を定着させるために欠かせない工夫であると考えています。

【カークパトリックの4段階評価モデルについては、こちらのブログでも解説しています】
https://www.leapkk.co.jp/2021/11/26/visualize_results/

【PLE30については、こちらのブログでも解説しています】
https://www.leapkk.co.jp/2021/12/17/leap_ple/

質問3
上司主導の実務(商談)スキルの育成は、目指したい理想ではありますが、本当に実現可能なのでしょうか?
三枝氏の回答:「メーガーの3つの質問」を念頭に置き、組織が一丸となる

実現は可能です。そのためには上司が主導するためのスタートラインが非常に重要で、「メーガーの3つの質問」を念頭に置き、部下との関係を構築していく必要があると考えています。

つまりその職場では、何ができればよいと言えるのか、そして、できたかどうかをどうやって知るのか(今回のテーマである測る力)、を明確にして組織の中に共有すること、そしてしっかりギャップを確認することが、上司が現場で主導していく上で、ポイントになると考えています。

横河では「育成ルーブリック」として、上司が日々の業務の中で部下をリードしていけるようにプロセス化を行いました。最初は育成担当が介入して教育をリードするところからスタートし、組織のあるべき姿へ近づいていくことができたのではないかと思います。

少しずつ上司に主導を移行していき、プロセスがまわるようになってきたら、育成担当は足掛けをはずすように(自転車の補助輪をはずすイメージ)、上司に主導を委譲していく、この段階的な委譲がポイントかと思います。

「育成の時間が取れない」「育成の優先度が低い」上司もおりますし、育成担当が現場に対する配慮が足りない場面もありましたが、経営側が厚くサポートすることで乗り越えることができました。やはり一部の熱意だけでは難しいので、上層部もサポートに入って組織が一丸となることは必要です。とくに育成担当を孤立させないことが重要になってくるかと思います。

【メーガーの3つの質問については、こちらのブログでも解説しています】
https://www.leapkk.co.jp/2019/11/27/mager/

「業務に対して最適な人員を配置する」というシンプルかつ逆転の発想も重要

組織間の連携、社内に横ぐしを通すことが重要なことは、頭では理解していてもそのアプローチの方法や決断をするのが難しい場面も多いかと思います。情緒的な判断をして混乱から抜け出せなくなる前に、組織の課題を数値化する、可視化する、計測するという観点を取り入れることで突破口を見出してみてはいかがでしょうか。

組織はどうしても「現状在籍している人員にいかに業務を割り振るか」を考えがちですが、逆転の発想で「業務(や目標)のレベル感に合わせて最適な人員を配置する、レベルに到達していない部分は育成をして補う」というアプローチが重要であると改めて認識した講演となりました。

講演中はどうしても全ての質問のお答えすることができませんので、当講演に関すること、それ以外の疑問やお悩みも、リープまでお気軽にお問い合わせください。

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