顧客と価値を創り出す ~サービスドミナントロジック~
2025年4月25日更新
ざっくりのあらすじ
1. サービスドミナントロジックとは企業が提供する価値は、モノやサービスの機能だけでなく、顧客との共創によって生まれるという考え方である
2. 従来のビジネスでは企業が価値を決めて販売していたが、サービスドミナントロジックでは顧客の体験や活用を通じて価値が生まれている
3. サブスクリプションサービスや体験型ビジネスなど、企業と顧客が共に価値を創出するサービスが増えている
4. 企業は単なる販売ではなく、顧客のニーズや体験を重視したマーケティングやサービス開発が求められている
営業や商談の場で、商品の機能や性能ばかり強調していませんか?
現代の市場では、「モノづくり」から「コトづくり」へとシフトが進んでいます。
高度経済成長期には、製品の機能や性能が高ければ顧客から選ばれ、購入されていましたが、現在のビジネス環境では、顧客の体験価値を高め、企業と顧客が価値共創することが重要視されています。
なぜ顧客と価値を共創することが重要なのでしょうか?
その理解を深めるために、今回は「サービスドミナントロジック」という概念をご紹介します。
サービスドミナントロジックとは?
「サービスドミナントロジック」は、2004年にアメリカのマーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとスティーブン・L・バーゴによって提唱されました。「サービスドミナントロジック」について知ることで、顧客が抱える課題をよく理解し、営業や商談、マーケティングなどに活かすことが出来ます。
「サービスドミナントロジック(Service Dominant Logic:サービス中心論理)」とは、企業が提供する商品を、有形か無形か、モノかサービスかに関わらず、すべての経済・経営活動を「サービス」として包括的に捉える考え方です。サービスドミナントロジックの特徴は次の3点です。
① 使用価値・経験価値……商品(サービス)の価値は、顧客が利用してはじめて生み出される
② 文脈価値……商品(サービス)の価値は、多様な背景を持つ顧客が決める
③ 価値共創……顧客は主体的な存在で、価値は顧客と企業が一緒に生み出すものである
サービスドミナントロジックでは、商品(サービス)の価値は一方的に企業側から提供されるものではなく、顧客の手に渡った後に得られる体験や経験を重視するのが最大の特徴とされます。 つまり、企業は価値を提案する役割を担い、主体的に顧客に判断してもらうことで、企業と顧客が共同で価値を創造していく関係性が構築されていくのです。
グッズドミナントロジックとの違い
サービスドミナントロジックが「コト」と「モノ」を包括するのに対し、グッズドミナントロジックは「モノ」を中心として経済活動をとらえる価値観です。
グッズドミナントロジックは、売り手である企業が商品(グッズ)の価値(価格)を決定して顧客に提供・販売し、顧客がその対価(貨幣)を支払って商品を得ることで「価値交換(所有権の移転)」が行われるという考え方です。
この価値観では、まず売り手となる企業が商品の価値をあらかじめ価格という形で決定・提供します。そして顧客はその価格に合意して対価を支払うことで、「価値交換(所有権の移転)」が行われるのです。つまり価値を創出する主体は企業であり、顧客の手に渡った後の価値については考慮されていません。 こうした企業と顧客の関係性は、従来のマーケティングやビジネスの多くに当てはまっています。
あなたの会社の営業やマーケティングスタイルは、サービスドミナントロジックでしょうか?あるいはグッズドミナントロジックでしょうか?
身近なサービスドミナントロジックの事例
サービスドミナントロジックの概念は、すでに多くの企業に取り入れられています。
今回はその一例として、Nintendo Switch(ニンテンドー・スイッチ)というゲーム機を取り上げたいと思います。
*ここからは、筆者が感じている価値であり、任天堂さんの公式な見解ではありませんのでご了承ください*
その昔、テレビゲームと言えば、子どもがゲームに夢中になってしまい、勉強をしない、家の手伝いをしない等、多くの親に取っては悩みの種でもありました。また、家や自室に籠ってゲームばかりしてしまう人もいて、家族や友人とコミュニケーションをとる時間が減ってしまうということもありました。
その点、Nintendo Switchはゲームができる機械を開発・販売しただけではなく、親にも子供にも安心して使えるような見守り機能や見守るためのアプリを提供しました。テレビCMや小中学校での安全にゲームをするための周知活動も行われています。その結果、子供も納得し、親の間でもNintendo Switchの設定について情報交換や議論がされたりされながら、安心してゲームをさせられる環境が整ってきています。企業と親や子供が共に、安心・安全なゲーム環境を作っていると言えます。これは一つの価値です。
参考:https://www.nintendo.co.jp/csr/report/consumers/topics/index.html?active-topics=topics02
また、コミュニケーションに関しては、プライバシーに配慮しながら、友人や見知らぬ人とも通信機能やオンラインでゲームを楽しむ機能が整備されたり、家族で楽しめるゲームソフトが販売されたり、子供から大人まで楽しめるイベントが企画されるなど、Switchを介した新しいコミュニケーションが広がってきています。これも、企業と顧客で生み出されている価値と言えます。
もちろん、ゲームが持つすべての負の側面が解決されたわけではないでしょう。
しかし、企業と顧客で価値創造をし、その価値に共感した人々と共にNintendo Switchが育まれている、その様な状態を創り出せているのではないでしょうか。
ここでは、Nintendo Switchを例にあげましたが、「サービスドミナントロジック」の考え方が取り入れられている商品やサービスが沢山あると思います。それらが、どのような価値を顧客と創り出しているか、を観察してみることが、サービスドミナントロジックを理解するヒントになります。是非トライしてみてください。
顧客とどのような価値共創をしていくべきか?
ここ数年の時代の変化とともに、顧客は商品・サービスそのものよりも、商品やサービスによって得られる「価値」を重視する潮流となっています。近年、「サブスクリプションサービス」や「体験型ビジネス」などのビジネスモデルも拡大し、消費者の価値観も「モノ」自体よりも、それを手に入れることで得られる「体験や経験」を重視する傾向が高まっています。
営業や商談、マーケティングにおいて「顧客が欲している体験や経験は何か」「どんな価値を顧客と共創できるか」という視点を持つことで、より成果につながる販売戦略を生み出すことが出来るのではないでしょうか。
まとめ
サービスドミナントロジックを理解することで、販売中心の考え方(グッズドミナントロジック)から脱却し顧客との持続的な関係を築くことが出来る可能性が高まります。
サービスドミナントロジックの考え方はわかったが、商談での対話が上手くいかない等のお困りがある場合は、是非リープにお問合せ下さい。
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サービスドミナントロジックに関する、産業技術院大学大学院の越水重臣教授と、弊社代表・堀の対談動画もございますので、是非ご覧ください。
執筆者プロフィール
堀 貴史 リープ株式会社代表取締役・パフォーマンスアナリスト
一般財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ、認定アクションラーニングコーチ、
CompTIA CTT+ Classroom Trainer、CompTIA Project+、創造技術修士(専門職)
パンダやクマ、甘いものが大好きです。みんなに健康を心配されていますが、、、元気です!