「人的資本経営」への関心が高まっています。もしかしたら、あなたの会社でも、「人的資本経営」の実現のために人材の育成方法を変えていく、というお話があった(これからある)かもしれません。しかし、こんな風にお感じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

・「人的資本経営」っていっても、一体何から始めたらよいの?
・「人的資本経営」って、経営者や人事が気にする事じゃないの?

実は、人的資本経営は経営者層や人事だけではなく、教育・研修部門の方や、部下を持つ方にも、関連が深いものです。今回の記事では、人的資本経営についての理解を深めつつ、これからの時代に必要とされる「戦略的な人材育成のヒント」をご紹介したいと思います。

人的資本経営とは?

人的資本経営について書かれた「人材版伊藤レポート」をご存知でしょうか?このレポートを取りまとめている、一橋大学名誉教授で、人的資本経営の実現に向けた検討会 座長の伊藤邦雄さんは、「人材版伊藤レポート2.0」の策定に寄せてこう書いています。

人材は「管理」の対象ではなく、その価値が伸び縮みする「資本」なのである。企業側が適切な機会や環境を提供すれば人材価値は上昇し、放置すれば価値が縮減してしまう。人材の潜在力を見出し、活かし、育成することが、今まさに求められている。

「人的資本経営」とは、人材を「資源(リソース)」ではなく「資本(キャピタル)」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。海外では既に積極的に行われている「人的資本の情報開示」が日本でも企業に求められるようになってきており、「人的資本経営」への関心はさらに高まることが予測されます。

人的資本経営の3つの視点

同レポートでは人材戦略に求められる3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素(Common Factors)の「3P・5Fモデル」を提示しました。今回は3つの視点に絞ってご紹介しつつ、戦略的な人材育成を実践するヒントを探りたいと思います。

人的資本経営に必要な視点①  経営戦略と人材戦略の連動

人材版伊藤レポートではとりわけ3Pの1つめ「経営戦略と人材戦略が連動しているか」という視点を強調しています。

企業を取り巻く環境が大きく、かつ、急速に変化する中で、持続的に企業価値を向上させるためには、経営戦略・ビジネスモデルと表裏一体で、その実現を支える人材戦略を策定・実行することが必要不可欠である。

当たり前のように聞こえますが、経営は経営、教育は人事あるいは教育部門と縦割りで、連動していないケースも多くあるのが現状です。

人的資本経営に必要な視点②  As is – To be ギャップの定量把握

2つめの視点は「As is-To beギャップの定量把握」です。「経営戦略実現の障害となる人材面の課題を特定した上で、課題ごとにKPI(重要業績評価指標)を用いて、目指すべき姿(To be)の設定と現在の姿(As is)とのギャップの把握を定量的に行うことは、人材戦略が経営戦略と連動していることを判断し、人材戦略を不断に見直していくために重要である」と同レポートには記載されています。

あなたの会社では、To be と As isとのギャップの把握を定量的に行うことが出来ていますか?

人的資本経営に必要な視点③  企業文化への定着

人的資本経営に必要な3つ目の視点が「企業文化への定着」です。

この項目に関しては、人的資本経営を意識する以前から重視している企業が多く存在します。近年では、人的資本経営の軸として「パーパス経営」の重要性が叫ばれています。パーパス(存在意義)や企業文化を社員に共有し共感を得るための有効な手段の一つである「CEO・CHROと社員の『対話の場』の設定」に取り組む企業は、全体で25%、大企業では39%と4割程度となっています。

人材版伊藤レポートでは、企業文化への定着について以下の様に重要性を説いています。

企業文化は、所与のものではなく、日々の活動・取組を通じて醸成されるものであり、企業理念、企業の存在意義(パーパス)や持続的な企業価値の向上につながる企業文化を定義し、企業文化への定着に向けて取り組むことが必要である。

あなたの会社では、社員と対話の場が作れていますか?パーパスや企業文化を共有し、共感が得られていますか?

戦略的な人材育成を進めるヒント

戦略的な人材育成を進めるヒントになるのが、先にご紹介した人的資本経営の3つの視点です。その中でも、①経営戦略と人材戦略の連動、②As is – To beギャップの定量把握の視点を実践すれば、企業のビジネスゴール達成に近づくことが出来るようになります。

リープでは、ビジネスゴールを達成するための戦略的な人材育成について、こちらの図を使ってご紹介させていただく事があります。

パフォーマンスゴール(To be)と、現在の社員のパフォーマンスの現状(As is)を把握し、そのギャップを埋めることで、企業のビジネスゴール達成に繋がります。ギャップを定量的に把握し、教育的介入策で埋められるものに対しては、研修などを実施します。戦略的な企業教育を実現するために、リープでは社員のパフォーマンスの評価や分析をとても大切にしています。

もちろん、今日明日すぐに変わるものではなく、③企業文化への定着の視点で社員との対話をしながら、共感を得ていくことも必要です。また、学習環境を整えて社員を支援する仕組みも必要になります。

As isTo beを明らかにする「ルーブリック」評価

リープでは、製薬企業や、BtoB商談を行う様々な企業に「ルーブリック」を用いたパフォーマンス評価や分析を実施させていただいています。(詳しくはこちら

商談や営業や、マネージャーが部下と行うコーチング。そのようなスキルについては、ギャップ分析を行い、必要な研修やデータに基づくOJTを実施することで、スキルが向上し、成果に結びつく例も少なくありません。先日開催されたセミナーにて、横河電機株式会社様の事例をご紹介いただいていますので、是非参考にしてください。

【イベントレポート】 測る力が組織を変える~横河電機様の事例より~

2022年8月31日(水)まで、アーカイブ配信も行われています。是非ご覧ください!
詳しくはこちらのページ をご確認ください。

まとめ

今回は、人的資本経営についての理解を深めながら、人的資本経営を実現する一つの方法である「戦略的な人材育成」のヒントを事例を交えてご紹介させていただきました。人材は、かつては資源(リソース)と考えられていましたが、これから「人材は資本である」という考え方が一般的になることでしょう。

人的資本をどのように活かすか、その技量は、経営者や人事のみならず、部下を持つ上司の方にも今後ますます求められることになります。リープでは、As isとTo beのギャップを定量的に把握するためのパフォーマンスの評価・分析を軸に、戦略的な教育設計のご支援をさせていただいています。お気軽にご相談・お問合せ下さい。

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