ファーマIT&デジタルヘルスエキスポ セミナーレポート 『データが導く生産性向上とセリングスキル強化!~研修リソースの最適化でセールス力を加速~』

パフォーマンス評価・設計, 教育評価, 研修効果


2024年4月17日「ファーマIT&デジタルヘルスエキスポ 2024」にて、リープ株式会社 取締役の荒木 恵氏をモデレーター、フェリング・ファーマ株式会社のコマーシャルエクセレンス部 部長である吉田 栄一氏をゲストに迎えたセミナーが開催されました。企業の研修リソースの最適化の実施により、セールス力を向上させたフェリング・ファーマ株式会社の取り組みに関する講演内容をまとめます。

迫られる、企業内教育のグランドデザインの見直し

まず、冒頭でリープの荒木氏より、社会情勢の変化に伴う企業のビジネスモデルの変化により、社員に求めるパフォーマンスゴールも変わり、求められる社員教育のグランドデザインの見直しが必要とされていると紹介がありました。
データに基づいた企業内教育のグランドデザイン

製薬会社を取り巻く事業環境の変化

また荒木氏は、デジタル化が一層進み、社員に求められる実務能力(パフォーマンス・ゴール)が高度化している状況について触れ、それは製薬会社も例外ではなく、オムニチャネルやペイシェントセントリシティの組織への落とし込みなど、状況が大きく変化していると話します。
製薬会社を取り巻く昨今の事業環境
そして、講演のゲストであるフェリング・ファーマの吉田氏より、コマーシャルエクセレンス部の部長という立場から、研修リソースの最適化、MRの育成の仕組みづくりについて紹介されました。

オムニチャネルとMRの役割

フェリング・ファーマでは、プロモーションのチャネルコンセプトを大きく2つに分けており、MRを中心としたチャネル展開と、デジタル(オウンドサイト、サードパーティー等)を中心としたチャネル展開に分けております。患者さんや医療関係者に自社医薬品が適切な患者さんに適切に届けられることを目指しており、一方でフェリング・ファーマのリソースの最適化にもつながっていると吉田氏は話します。

F2F(フェイス・トゥ・フェイス)コミュニケーションのトレンド

講演でフェリング・ファーマの吉田氏は、F2Fコミュニケーションのトレンドについてデータを用いて解説しました。データによると、新型コロナウイルスの流行でF2Fのコミュニケーションは急速に減少しましたが、2023年5月に新型コロナウイルスが5類に移行し、最近では70~80%程度まで回復しています。

しかし、2024年から医師の働き方改革が始まり、医師とMRの面談の機会はより限られていうことが予想されると吉田氏は話します。

ここまでのデータと制度改革が意味することは、F2Fのコミュニケーションの価値が年々高まっている、つまりMRの価値が高まっていると言うことができ、さらに一回あたりの面談コストも高くなっているということです。

フェリング・ファーマでは、このような状況を予測し、一つひとつの面会の機会を大切にし、医療関係者とのコミュニケーションの質をどれだけ担保するかが重要なポイントであると考え、すでに取り組みを開始しています。

期待値と現実のギャップ

フェリング・ファーマでは、SFE(Sales Force Effectiveness)を強化するための重要項目をいくつか設定していますが、その中でも「顧客との面談インパクトの上昇」という、面談の「質」の向上に対して力を入れています。
SFE(Sales Force Effectiveness)を強化するための重要項目

トレーニングスタッフのリソースを最適化する必要性

フェリング・ファーマでは、面談の「質」の向上を目指している現在、社内の研修部門のトレーニングスタッフに期待が寄せられており、限られたトレーニングスタッフが、多岐に亘る業務をこなしながら、各ビジネスユニットの期待に沿った形での教育を提供しなければならない状況にあると吉田氏は言います。
トレーニングスタッフの役割と課題

質を担保するトレーニングの必要性

フェリング・ファーマではMRのアセスメント手法は存在していたものの、MRの面会スキル、つまり医師とMRの双方向のコミュニケーションを定量的に評価する難しさやフォローアップ方法に関する社内のノウハウに限界があると感じていました。

また、「F2Fコミュニケーションのトレンド」のセクションで記述した通り、医師とMRの1回あたりの面会時間が非常に限られている中では、面会の「質」が大切になります。しかし、本当にMRが研修で実施した内容ができているのか、医療関係者にとって価値ある面談ができているのか、質が担保できているのかがブラックボックスになっていたといいます。

業界と比較したときに自社のMRのレベルが、業界平均以上の質を担保することが会社としての使命であり、質を担保するためには、個人に合わせた強化ポイントに対して十分なトレーニングを実施する必要性も感じていたと吉田氏は話します。

MRに求められるスキルの変化

リープの荒木氏が、オムニチャネルが推進される中、ここ数年「オムニチャネルを推進する上で、どのように社員の能力育成をしたらよいのか?」という相談が増えていることに触れました。

これに対し吉田氏は、従来は、製品情報や疾患情報を理解し、限られた面会期間を成功させるために顧客のニーズを的確に把握し、共通の課題を形成する能力が求められていましたが、オムニチャネルを推進する中で、MRにはさらに高度なスキルが求められるようになっていると言います。

具体的には、MRがオーケストラの指揮者のように、顧客に適切なチャネルとタイミングで情報を提供する能力が重要です。このためには、顧客の潜在ニーズをしっかりと見極める能力が求められます。

このようなスキルを身に着けることにより、MRは複数のチャネルを適切に管理し活用することができ、オムニチャネル戦略の成功に寄与することが期待されます。

医師との面談方法の選択基準

さらに荒木氏から吉田氏に対して、MRと医師との面談方法に関しての質問がされました。

現在は実際に訪問しての面談を促進しているのか、リモートでのオンラインでの面談を推進しているのかという質問に対し、吉田氏は以下の様に答えています。
面談方法については、顧客である医療関係者のニーズによって選択されるべきではありますが、治療に関わる最新の情報を最適なタイミングで提供してほしいというニーズというものは必ず医療関係者が持っているため、時間と距離を縮めることができるオンラインでの面会についても実際の訪問面談と同様に推奨しています。

オンラインでの面談では、顧客にとって最新の情報をタイムリーに取得することに繋がり、会社にとってもMRのリソースの最適化につながると考え推進を進めています。

教育環境(研修体制)の効果と効率を最大化するチャレンジ

フェリング・ファーマでは、セリングスキルの浸透と実践、MRの評価(アニュアルサーティフィケーションプログラム)についてリープとのコラボレーションを実施しています。
それまでフェリング・ファーマでは、リソースの制限やコミュニケーションを評価することについて課題を抱えていましたが、それがどのように改善できたのかを吉田氏に紹介いただきました。

リソースの最適化の実現

従来、ディテーリングのアセスメントを実施する際は、評価基準の作成から各MRのDTL(ディテーリング)評価の実施など、すべてをトレーニングスタッフが実施していました。しかし、昨年より客観的なDTL評価をリープが実施、総合的な評価をフェリング・ファーマとリープで実施することにより、フェリング・ファーマのトレーニングスタッフの「リソースの最適化を図ることができ、MRの納得度も上がっていると言います。
リソース最適化の実現

セリングスキルの評価指標を擦り合わせる重要性

リープのような外部ベンダと教育設計をする中では、製薬企業各社の独自のセリングスキルの指標と外部ベンダの指標と、どのように整合性をとるかが課題になることがあります。

フェリング・ファーマとリープはそれぞれ別のセリングスキルの評価指標を持っていました。そのため、フェリング・ファーマとリープは、MRが混乱しないように、評価を実施する前に丁寧にセリングスキルの指標について擦り合わせを実施し、単語なども含め整えるという工程を入れました。

また、スコア化の実施についても丁寧に擦り合わせ、最終的には偏差値でMRのDTLスキルを示すことが出来るようにしました。

このことにより、MRの混乱を防ぎ、マネジメント層の評価に対する理解が深まったと吉田氏は考えています。

評価の実施はスキル向上に役立ったのか?

リープの客観的なDTL評価結果から、フェリング・ファーマのMRの強みと改善ポイントが表現され、業界の平均と比べて改善の余地があるポイントについても明らかになりました。
初回の定量評価の結果フェリング・ファーマでは、2023年に2回のDTLの評価を実施しました。
1回目の評価の後には、評価結果から顕在化した課題に対するセリングスキルの研修、アウトプットトレーニングを実施しました。

その上で2回目の評価を実施したところ、特に課題だった「ニーズの把握から課題形成」の領域で、業界平均を上回るMRが3割程度になったことが確認できました。また、平均より劣っていた層は、1割程度減少していました。
2回目の定量評価の結果

約半年の間に行った2回の研修と日々のアウトプットトレーニングにより、短期間でもMRのスキルが改善する可能性が理解できたと吉田氏は話します。

評価/研修の履歴を一元管理するSkillPalette®

フェリング・ファーマでは、従来は評価結果や各種研修資料の共有を複数のシステムを通じて社員と共有していました。

しかし、今回の協業をきっかけに、リープが提供するSkillPalette®というプラットフォームを活用することで、過去の評価スコアなどを上長がワンストップで閲覧し、スキル指導に活用できるようになりました。

また、SkillPalette®では、情報がレイヤー化されており、マネジメントから現場の社員まで、それぞれの立場に応じて参照可能な情報が制御されており利便性も高くなっています。
SkillPalette

スキル改善のカギは、アウトプットとマネジャーのコーチング

吉田氏は、リープによる客観的なDTL評価の実施により、組織全体と個人の主要な課題を特定することができたと言います。

また、研修は一回で終わるものではなく、どれだけ継続し続けるか、改善し続けるかが医療への貢献で重要な課題であると言います。そして得た評価結果に基づいて毎月、毎週、毎日アウトプットを実施する、FLSMのコーチングの実施によって改善が図られていることを強調しました。

「客観的評価に基づく社員教育」はMRの満足度も高める

講演の最後に、吉田氏は、最近入社した社員からの言葉を紹介しました。

こんなに研修が充実した会社とは思っていませんでした。
前職の会社は比較的大きな会社だったが、研修が漫然と行われており、どこをゴールにしているかわかりませんでした。
フェリング・ファーマは、一人ひとりの能力をしっかりと伸ばすような取り組みが体系的にされていて大変感動しました。

そして結びの言葉としてこのように述べています。
「このような社員からの言葉は、私たちにとって一番の評価であり、一人ひとりの成長を担う立場として十分に投資し続けるということが重要であり、それがはたまた最終的には医療への貢献、患者さんへの貢献と考えてこの取り組みを進めています」

社内の理解を得て、外部ベンダを有効活用する

ここまで紹介させていただいたように、フェリング・ファーマでは定期的なアセスメントを実施し、顕在化した課題に対するフォローアップトレーニングを実施することで、大幅なスキル向上という成果を得ることが出来ました。

このような成果が出せたフェリング・ファーマですが、セミナーのクロージング前に、荒木氏から吉田氏に対して、リープと協業する際に考えられる2つの課題について率直な質問が投げかけられました。

評価実施について、MRの理解は得られたのか?

荒木氏から「アセスメントは社員から嫌がられるのではないか?」という質問に対し、吉田氏からは以下のように回答がありました。

「定量的に評価をするということは、順番がついてしまうという理由から嫌がられるものではあるものの、より質の高い情報提供をするために最低限必要なアセスメントであることを社員の一人ひとりが理解しています。事前準備や当日の緊張感をもって評価を行った結果、実際の現場でも再現性が高まり、一人ひとりの自信につながり、ひいては医療への貢献につながることを納得して受けていただいています。」

製品や戦略をベンダと共有する不安はなかったのか?

荒木氏からは、スキルトレーニングの実施に際し、製品や戦略に関わる内容を外部ベンダ(リープ)に共有することに対して不安がなかったかという質問も投げかけられました。

この質問に対して吉田氏は、
「自社に固執せず、外部との協力を取り入れることで、受講者の期待値が増しています。充実した研修カリキュラムは会社と受講者の満足度を高めています。リープとの協業により、課題に応じた研修を適切なタイミングで提案でき、高い効果を実感しています。」と答えています。

終わりに

製薬業界では、オムニチャネルの推進など状況が変化しており、MRに求められるスキルも変化し、高度化しています。教育・トレーニングスタッフのリソースの制限があったとしても、医療への貢献という観点から、医療業界から必要とされるMRであり続けるための教育を実施することが求められます。

客観的な評価結果から得られたデータから教育のグランドデザインを設計し直し、MRに教育を実施することは、今後のMRの重要性に大きな影響を与えていくことでしょう。

 

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