あなたの話は本当に伝わっていますか?デリバリースキルを鍛える~ビヘイビア編~

インストラクショナルデザイン, ガニェの学習効果の5分類, パフォーマンス評価・設計, 商談力

ざっくりのあらすじ
1. デリバリースキルは、ビジュアル、ボーカル、ビヘイビア、バーバルの4つの要素に分類できる
2. 特にビヘイビア(立ち振る舞い)はガニェの学習成果の5分類では「運動技能」に分類され、実演と練習で向上できる
3. ビヘイビアの向上には、明確な評価基準に基づく客観的な評価とフィードバックが不可欠である

顧客との商談やプレゼンテーションに向けて、しっかりと準備や練習をしてきたつもりなのに、本番では顧客に「なんだか伝わってない」という結果になってしまった経験はありませんか?
特に昨今は、オンラインで商談することが普及してきたこともあり、余計にそう感じる方も多いのではないでしょうか。

「伝わらない」原因の一つには、「デリバリースキル」があるかもしれません。

多種多様なコミュニケーションの手段がある時代だからこそ、「デリバリースキル」をしっかり意識してみませんか?

デリバリースキルって?

デリバリースキルとは、プレゼンテーションなどを行う際の話し方や表現方法のスキルのことです。
リープでは、デリバリースキルを評価する際に、以下の4つの観点に細分化しています。

① ビジュアル(見た目)
② ボーカル(聞こえ方)
③ ビヘイビア(振る舞い)
④ バーバル(言い回しなど言葉に関すること)

以前、ボーカルスキルについてコラムでご紹介しましたが、今回はデリバリースキルを鍛える第2弾!として、ビヘイビア編をお届けします。

(ご参考)デリバリースキル第1弾
あなたの話は本当に伝わっていますか?デリバリースキルを鍛える~ボーカルスキル編~

 

第1弾のおさらいにもなりますが、インストラクショナルデザイン(ID)では、鍛えたいスキルをその“成果の質”に応じて分類・整理することで、学習の効果や効率を高めることを考えます。
「ガニェの学習成果5分類」では、スキルを性質ごとに“言語情報”、“知的技能”、“認知的方略”、“運動技能”、“態度”の5つに分類し、それぞれの性質に適した評価方法や練習方法を提案しています。

 

「ガニェの学習成果の5分類」でデリバリースキルのビヘイビアを整理してみると、“運動技能”が当てはまります。

デリバリースキルをただ漠然と闇雲に練習するのではなく、学習成果の質や学習者の特性に応じて現状に適した練習をすることで、効果的・効率的なスキル向上につながります。
実際に、「ビヘイビア」の評価のポイントや学習方法の例についてみていきましょう!

デリバリースキル評価のお問い合わせはコチラ

ビヘイビアって?

デリバリースキルにおけるビヘイビア(Behavior)は、プレゼンテーション中における立ち振る舞いのことです。
「ガニェの学習成果の5分類」で考えると、一見、“態度”に該当するように思われますが、学習成果における態度とは、「ある物事や状況を選ぼう/避けようとする気持ち」であり、“マインド”のことです。

一方、デリバリースキルにおける立ち振る舞いとは、ジェスチャー(身振り手振り)やアイコンタクト(視線)のことを指し、身体の動きでデリバリーの効果を高めようとすることなので、“運動技能”に分類されます。

運動技能の評価方法と指導方略には、次のようなポイントがあります。

運動技能の評価のポイント

  • 実演させる(やり方の知識と実現する力は違う)
  • チェックリストを活用し、正確さ、速さ、スムーズさを確認する

例)
 ジェスチャー(手や体の動き)や、ポインター(場合によっては指し棒)を(静止させて明確に指す)使って話しており、聴講者は概ね問題なく説明を聞く事ができる
 聞き手に対して視線やアイコンタクトを送りながら話しており、聴講者は概ね問題なく説明を聞く事ができる

運動技能の指導方略のポイント

  • 理想的な運動の実演(動画を含む)を見せる
  • 実演を見せたあと実際に実行させる
    ※適宜補助し、段階的に補助を少なくする
  • 全手順が実行できたら練習を重ねスピードや正確さ、タイミングを磨かせる

 理想的なプレゼンテーション動画を見て、立ち振る舞いを覚える
 実際に学習者のプレゼンテーションを録画し、ビヘイビアを確認する
 指導者、同僚に披露し(実演または録画)フィードバックを受けて繰り返し練習する

運動技能の習得のポイントを確認したところで、何ができていることが良いビヘイビアといえるのか、より詳しく紐解いてみましょう!

「なんだか伝わってない」商談やプレゼンテーションになってしまう原因が、対面やオンラインなど、場面に合ったビヘイビアができていないことであると考えられる場合には、ビヘイビア(運動技能)の課題に合ったトレーニングを取り入れてみましょう。

例えばオンライン会議においては、画面越しに上半身(カメラの画角によっては顔だけなど)だけが相手に見えている状態になりやすく、その場合はジェスチャーが少なく(見えづらく)なります。
また目線についても、カメラやモニターなど、目線をどこに持っていけば良いのかが未だに難しいと感じている方も多いのではないかと思います。

今回は、ビヘイビアのトレーニング方法の例を、①ジェスチャー ②ポインター ③アイコンタクト の3つの観点でご紹介します。
またそれぞれスタンディング(対面)とオンラインに分けてご紹介しますので、ぜひ場面に応じて活用してみてください!

① ジェスチャーのトレーニング

スタンディング

録画した自分の姿を見てみると、実に多くの「クセ」が出ていることに気がつくかもしれません。

足の位置が落ち着かずに常に小刻みに動いている、猫背になっている、常に大袈裟なジェスチャーで手が動いている、などなど……。こうしたクセは、聴講者がプレゼンの中身と資料に集中しづらい状態を作ってしまいます。

以下の点を意識して、聞き手がプレゼンに集中しやすい振る舞いができるとよいでしょう。

  • 「立ち位置を決めて、不用意に移動しない」
    • 最初に立ち位置を決め、そこに根を張るように脚を伸ばして立つ
    • 最も伝えたいポイントを話すときは、手などでジェスチャーすると同時に、動いて(立ち位置を変えて)強調することも重要
  • 「手はリラックスして強調したい部分で少し動かす」
    • 基本的に腕をリラックスさせて、手を下ろしておく
    • 強調したい部分で手を前に持ってくるなど、動作にメリハリをつける
    • 腕組みは厳禁!

オンライン

上半身だけが相手に見えていたり、顔がアップになっていたりする状態であることが多いオンラインでは、プレゼンターの上半身や顔に視線が集中するので、スタンディングとはまた違った「クセ」が強調されてしまう場合があります。

椅子の背もたれに大きくもたれてしまっていませんか?
つい頬杖をついたり、髪をかきあげたりしていませんか?
逆に、何の手振りもなくプレゼンを読み上げてしまっていませんか?

オンラインにおいて気を付けるべきビヘイビアは、基本的にはスタンディングと同様ですが、オンラインならではの工夫を取り入れることで、よりよい立ち振る舞いができるようになります。

  • 「背筋を伸ばして座る」
    • プレゼン中は椅子の背に大きくもたれかからず、背筋を垂直にして座る(ふんぞり返っているように見えてしまうと大きく印象を下げる)
  • 「手振りのジェスチャーは意識して使う」
    • 常に手振りをする必要はないが、強調したい部分などはスタンディングよりもやや大ぶりに手を動かすジェスチャーを意識する(カメラの画角への収まりを考慮する)
      オンライン会議

② ポインターのトレーニング

スタンディング

最もやってしまいがちな振る舞いに、「ポインターを見てほしいところでグルグル回す」というものがあります。
ポイントを強調する行為ともいえますが、やりすぎると逆に見づらくなってしまいます。適切なポインターの使い方を意識して、練習してみましょう。

  • 「脇を締めてポインターを固定する」
    • レーザーポインターを使用する場合はしっかり脇を締めてポインターを固定する
  • 「ポインターの誤操作に注意する」:
    • ジェスチャーが必要なところでは、ポインターを押さないように十分に注意する
  • 「強調したいところにだけポインターを置く」
    • むやみにポイントを動かさず、強調したいテキストやグラフにさりげなく置く(レーザーポインターとスライドショーのポインター機能共通)
    • 無理に動かさなくても強調されていることが聴講者には伝わる
  • 「テキストをなぞらない」
    • 前項と同様にポインターを置いて、自身はしっかりと聴講者を向いて発表する
    • 丁寧に伝えたいあまりテキストをなぞりながら読んでしまわないようにする
  • 「ポインターは初めから出しておく」
    • スライドショーで資料を紹介する際に、話し始めてから、右クリックでポインターを出す操作をするのではなく、あらかじめカーソルをポインターに変更しておく
    • 発表中の操作は、余計な間を聴講者に感じさせてしまう
オンライン

基本的にはスタンディングと同様に、「強調したいところにだけポインターを置く」「テキストをなぞらない」「ポインターは初めから出しておく」ようにできるとよいでしょう。

ポインター

③ アイコンタクトのトレーニング

スタンディング

出来ているつもりでも、実はあまり出来ていない、ということが多いのが「視線を聴講者に送って反応を確認する」ことです。自分の発表に夢中になってしまうとついやってしまいがちですが、「プレゼンテーションも1対1の商談と同様に相手の反応を見て行う」ことを意識できると効果が高まります。

  • 「最初に見渡す」
    • 登壇したら、プレゼンテーションを始める前に全体を見渡す
    • 「皆さん全員に関係のある話である」という意思表示や、聴講者の動機づけにもなる
  • 「できるだけ全員にさりげなく視線を投げる」
    • 視線は聴講者の方に向けるようにし、スクリーンや手持ちのPCばかり見すぎない
    • 発表しながら、各聴講者に視線、アイコンタクトを送る
    • こうしたアイコンタクトにより、しっかり聴いている人にとっては「自分の納得度を確認してくれている」と感じさせ、上の空の人には「まずい、ちゃんと聴かないと」という注意喚起につなげることができる
  • 「特定の人に視線を集中させない」
    • 重要な聴講者(役職の高い人や決定権者、決裁者など)にばかり視線を集中させない
    • 特定の人にばかり視線を集中させるのは、視線を向けられない人にとって気持ちのよいものではなく、悪印象や反抗心などを持たれやすくなる

オンライン

オンラインでのアイコンタクトで誤解されがちなのが「カメラ目線」です。

カメラ目線で話しているか否かは、想像以上に聴講者の感情に影響します。また、モニターに顔が大きく映っている分、プレゼンの原稿を読んでいて聴講者を向いていないということも、スタンディング以上に強調されてしまいます。そうならないよう、アイコンタクトも意識して行う必要があります。

  • 「カメラ目線でも見渡すジェスチャーを」
    • カメラの一点を見て話してしまいやすいが、スタンディングと同じように左右に見渡すジェスチャーを行うことも効果的である
  • 「モニターの中の人に話しかけているのではなく、会場内で出席者に話しかけている意識を持つ」
    • モニターに映る参加者の顔をのぞいて話してしまいやすいが、モニターを見ながら話すと、聴講者にとっては視線を切らせているように見える
    • オンラインのプレゼンテーションにおいても、(ヴァーチャルな)会場に皆が集まっていると意識して、視線をコントロールする

成果の創出には、客観的な評価が必須条件

今回はデリバリースキルの中で「ビヘイビア」についてその学び方と鍛えるポイントをお伝えしました。いくら自分でトレーニングをしても、実際にどのように伝わっているのかはわからないため、客観的な評価が大切になります。

自身のスキル課題を正しく把握し、必要なトレーニングを行うには、適切な評価がポイントです。そのためには、前述の「運動技能の評価のポイント」のように、あらかじめ評価観点を明確にしておくこと、その評価観点に基づいて、自己評価や他己評価を行うこと、できる限り指導者や同僚からたくさんのフィードバックをもらうことが肝要です。

私たちリープでは、「デリバリースキル」の評価やトレーニングもしておりますので、ご要望があればお気軽にお知らせください!

お問い合わせはこちら

関連記事一覧