ジョン・B・キャロルが1963年に提案したモデルは、「成績の差は学習者の能力差ではなく時間差である」という発想を導入したものです。このモデルでは、課題達成の度合い(テストでの成績=学習率)は、学習者が特定の課題を達成するのに必要な時間に対して、実際にどれだけ時間を学習に使ったかの割合で評価されます。
キャロルのモデルにおいては、学びの進捗は時間との関連性に基づいており、十分な時間をかけることで誰でも学べるという理念が根底にあります。この考え方は後に、完全習得学習の基盤となり、また、飛び級や落第などの教育制度に影響を与えました。さらに、このモデルはInstructional Design(ID)の前提として採用され、学習者の個別差を時間の違いとして捉えるアプローチが確立されました。
用語集
キャロルの学校学習の時間モデル
概 要
解 説
この学習率のモデルでは、学習率(課題達成の度合い)は学習に費やされた時間と学習に必要な時間の比率として表現されます。具体的な式は以下の通りです。
学習率=学習に費やされた時間÷学習に必要な時間=(学習機会×学習持続力)÷(課題への適性×授業の質×授業理解力)
また、このモデルにおいて学習に必要な時間や費やされる時間を左右する要因がいくつか挙げられています。
1.課題への適性:学習者がある課題を達成するのにかかる所要時間。適性が高いほど時間が短縮される傾向があります。
2.授業の質:教師が実施するだけでなく、教科書やコンピュータ教材なども含めた学習資源の質。高い質の授業は学習にかかる時間を短縮させます。
3.授業理解力:学習者が授業の質の低さを克服する力。一般的な知識と言語能力が高いと、授業理解力が高まります。
4.学習機会(許容された学習時間):ある課題を学習するためにカリキュラムに用意された授業時間。
学習持続力(学習意欲):与えられた学習機会のうち、実際に学ぼうとする努力としての学習に使われた時間。高い学習持続力は学習率の向上に寄与します。
参考文献
鈴木克明監修 市川尚・根本淳子編著 「学びやすさ」の道具 インストラクショナルデザインの道具箱101 p 86