支店長の迷いを紐解く Vol.1
現代リーダーに必要な対話力


今回お話を伺ったのは・・
永田 寿夫
リープ株式会社 顧問(フェロー)
認定プロフェッショナル コーチ。
外資系製薬企業3社で営業全体の責任者を歴任し、現在は、リープ株式会社にてフェロー(顧問)として、顧客企業のリーダーシップ、コーチングスキル等の育成に取り組んでいる。
長年、外資系製薬会社の最前線で活躍し、現在はリープ株式会社でエグゼクティブ・コーチとして活動する永田さん。
本連載では、変化の激しい現代においてマネジメント層に求められるスキルやマインドセットについて伺います。
第1回となる今回は、永田さん自身のキャリアの振り返りと、コーチングを学ぶきっかけとなった「失敗経験」、そして現代のリーダーに必要な「対話の技術」について語っていただきました。

*この連載では、ファーストラインマネジャーを「所長」、セカンドラインマネジャーを「支店長」と表現しています。ぜひ、皆様の組織体制に置き換えてお読みいただければ幸いです。
40年のキャリアと「阿吽の呼吸」で通じた時代
大学卒業後、外資系製薬会社に入社し35年間勤務しました。
その後、希少疾病を扱う会社で5年、最後に別の外資系で約2年。
トータルで40年以上のキャリアのほとんどを営業として、プライマリーからスペシャリティ領域まで経験してきました。
立場によって変化してきましたね。プレイヤー時代はやはり「数字」でした。
しかし、マネジメントする立場になると、部下の育成や戦略、そして営業責任者となると「信頼」が最も重要だと感じるようになりました。
特に1社目は35年という長い期間在籍しており、多くの支店長と同じ時代を共有していました。
そのため、私が何も言わなくても「永田の言いたいことはこういうことだろう」と、彼らが「阿吽の呼吸」で汲み取ってくれていたのです。
私の代わりに彼らが数字の大切さを現場に伝えてくれる。そうした信頼の積み上げが、目標達成や再現性のある行動に繋がっていたと思います。
ええ。ただ、数字が良い時期ばかりではありませんでした。
キャリアの後半で気づいたことですが、数字が悪いときこそ「人を信じること」「チームを信じること」が大切なのです。
しかし、これはあくまで「関係性がすでに構築されている」という前提があってこその話でした。
「暖簾に腕押し」の衝撃。通用しなかった自己流マネジメント
実は、最後の会社で「今までのやり方が全く通用しない」という経験をしました。
転職後すぐに支店長たちと1on1を行ったのですが、何名かの支店長とはうまくいくものの、そうでない相手とはまるで「暖簾に腕押し」状態でした。
当時はコロナ禍のフルリモートという環境もありましたが、彼らに何を話しても響かず、相手が何を考えているのか掴めない。
長年、人間関係構築には自信があっただけに、「なぜうまくいかないんだ」と非常にショックを受けました。
今考えれば当たり前なんです。当時の私には、相手に語らせるスキルもなければ、事実に基づいたフィードバックをする技術もありませんでした。「自分から見えていること」だけを伝え、こちらの思い通りに動かそうとしていただけでした。
関係性ができていない相手に、スキルのない1on1を行うことほど無意味なものはありません。その後、体系的なコーチングを学んで初めて、「あの時、このスキルがあれば」と痛感しました。

部下に見透かされる「我流」のコーチング
1on1、コーチングには「相手の話を聴く」「合意を取る」「フィードバックする」というプロセスがあります。しかし当時の私は「相手をなんとか納得させて、行動変容を強制する」ような面談をしていました。
すでに関係性があれば、「この人はこういう人だ」という理解で成立することもありますが、人材の流動性が高い現代では通用しません。理論に基づいたコーチングスキルが不可欠だと感じています。
そうです。今は書籍やネット、AIで誰でも情報を得られますから、部下のほうが「正しいコーチング」や「理想の上司像」を知っている可能性が大いにあります。
部下がコーチングを知っているのに、上司が我流で1on1をしていたら、「私の上司はコーチングを知らないのかな?」と見透かされてしまいます。
だからこそ、発想の転換が必要です。自分のコーチングに対して、部下にフィードバックを求めるという姿勢が必要なのかもしれません。
コーチングにおいて「相手にフィードバックを求める」というのは非常に重要なスキルの一つです。「今の1on1、どうだった?」と聞いてみる。そこで忖度なしにフィードバックしてくれる部下が1人でもいれば、それは上司にとって大きな財産になります。
スキルが生む「タイパ」と、支店長に求められる高度な対話
はい。そうして信頼の土台ができると、マネジメントの「タイパ(タイムパフォーマンス)」も劇的に良くなります。ダラダラと時間をかけるのではなく、ツボを押さえた対話ができるようになるからです。
例えば、週に1回20分、旬な話題で的を絞った対話をする方が、月に1回1時間の雑談交じりの面談よりも行動変容につながる可能性が高い。もちろん、単に時間を短くすればいいわけではありません。リープでも提唱しているGROWモデルのように、まずは「目的」をはっきりさせることが大切です。
所長は、多様な個性を持つMR一人ひとりに合わせた「テーラーメイド」の関わりが必要で、これは非常に大変な仕事です。一方で、支店長が相手にするのは、一度選抜された所長たちです。彼らは能力があり、自信もプライドもある。一筋縄ではいかない人たちです。
そうしたプライドあるリーダーたちを動かすには、MRに対するのとはまた違った、より高度な対話スキルや関わり方が必要になってくると感じています。

永田さん、ありがとうございます。次回、また詳しいお話を聞かせてください。
次回は、支店長と営業所長の「対話」についてお話をお伺いする予定です!どうぞお楽しみに!!