営業成果を決める「最後の鍵」は、現場リーダーにある
~個人任せのエグゼキューションを脱し、組織として成果を担保するには~
ざっくりのあらすじ
1. 営業成果のばらつきは個人の資質ではなく、組織成果の上限を決める現場リーダーの力量に起因する
2. 多くの組織では人間関係や客観的根拠の欠如が壁となり、リーダーの能力課題に対する介入が遅れている
3. 曖昧な定性評価を脱し、アセスメント等でリーダーのスキルをデータ化・可視化することが不可欠である
4. 可視化されたデータに基づく育成PDCAの高速化が、環境変化に対応する組織の競争優位をつくる
なぜ現場で「成果のばらつき」が生まれるのか?
営業成果への因果の道筋から、市場性などの環境因子の影響を取り除くと、最終的に残るのは「正しい活動を、想定した量だけ実行できたか」というエグゼキューション(実行)の問題です。
もちろん、営業担当者それぞれのスキル・工夫・動機付けによって活動の質と量が上振れし、成果に差が生まれるのは自然なことです。しかし、その営業成果のばらつきを「個人の問題」として片付けてしまって良いものでしょうか。
弊社が複数企業で実施したアセスメントでは、個人差だけでなく、営業所やチーム単位で“まとまった差”が表れる傾向が見られました。
この事実は、成果の良し悪しが担当者個人の資質だけに起因しているわけではないことを示唆しています。言うまでもなく、「成果のばらつき」は、「組織の成果に対する課題」です。したがって、その原因を担当者個人ばかりでなく、組織そのものに目を向けて分析する必要があります。
パフォーマンス・コンサルティングの基礎理論であるHPI(Human Performance Improvement)においても、パフォーマンス不全の原因は「個人要因が約18%、組織・環境要因が約82%」と言われています。

差を生み出しているのは「チームを率いるリーダー」
チーム単位で成果に傾向が生じる背景には、現場を牽引するリーダー(営業所長・支店長・マネジャー)が強い影響を与えていると考えられます。
- 戦略の伝達・カスケード
- メンバーのスキル・能力指導
- メンバーの動機づけ
- 活動管理の粒度とタイミング
これらは、同じ全社戦略のもとでも、リーダーによって大きく差が出る領域です。
残酷な現実ですが、営業組織において、メンバーの戦略理解度やスキルレベルが、その組織のリーダー(所長や管理職)を超えることは稀です。現場の能力向上は、リーダーの指導力や熱量に依存するため、「組織の成果の天井は、現場リーダーが決めてしまう」と言っても過言ではありません。
現場リーダーは一人の「個人」であると同時に、重要な「組織の機能」でもあります。
成果のばらつきを是正するには、リーダー個人に期待しその頑張りに頼ってばかりではなく、組織を牽引する経営層・営業推進・教育部門としては組織課題の一つとしてアプローチする必要があります。
なぜ組織は、この“リーダーの課題”を指摘できないのか
多くの経営層・営業推進・教育部門は、「成果を左右しているのは現場リーダーである」と内心気づいています。
実際に多くの企業で管理職研修は行われていますが、個別のリーダーの「能力課題」を正確に抽出し、改善に取り組めているかと言えば、そこには躊躇いがあるようです。
なぜ課題を明らかにすることを躊躇うのか?
そもそも課題抽出に手をつけられない背景には何があるのか?
弊社では以下の4つの壁があると考えています。
| 背景 | 詳細 |
| 人間関係への配慮 | リーダー本人への指摘が、組織の軋轢や士気低下を招く懸念がある。 |
| “空気”が優先される | 事実よりも配慮が優先され、本質的な議論が先送りされる。 |
| バイアスによる価値判断 | 人柄、組織内での振る舞い、業績、経験値などのバイアスで適切な能力の判断ができない。 |
| 根拠となるデータがない | 「環境要因(エリア特性等)のせいだ」と反論された時、覆す証拠がない。 |
皆さん、以下に心当たりはありませんか?
-
- 現場で頑張っているリーダーになかなか厳しいことが言えない
- 経験や個人の力で成果を出してくるリーダーの考えを尊重してしまう
- 同僚や幹部の好き嫌いが反映されている
このような状態では、正しく課題を明らかにするのは難しいものと思います。
リーダーの能力を見極めるために、頻繁にテリトリー変更(環境変え)を行うことは現実的ではありません。
そのため、市場環境の差を言い訳にされた際、それが「環境」のせいなのか「能力」のせいなのかを明確に示す証拠が出せないのです。
データでスキルや能力の現場課題を可視化する
こうした背景から、「データによる現場課題の分析」への関心が高まっています。
昨今、日本の経営環境において「人的資本経営」という考え方が広く浸透しており、「伊藤レポート」に代表されるように、人材戦略にもデータ活用が求められています。

人的資本においても「As Is-To Beの定量的なギャップ分析」に基づく意思決定が期待されていますが、現場スキルのデータ化・可視化は遅れています。
前述の「情緒・文化・構造」の壁により、現場がブラックボックス化したまま手が付けられていない企業が多いのです。
では、営業管理職においては、どのような能力が可視化されるべきでしょうか?
多くの企業で整理されているコンピテンシー(能力要件)の代表例は以下の通りです。

これらの項目、特に「戦略・戦術思考力」「目標達成・実行力」「専門知識・技術」「組織開発・人材育成」の多くは、第三者のアセスメントプログラム等を通じた定量的な可視化が可能です。
情緒や空気に流されない客観的なデータ(バイアスのかからないアセスメントデータ)で課題を抽出し、現場にフィードバックする。そうすることで初めて、納得感のある課題解決が進み始めます。
営業所長やリーダーのスキル棚卸しが、組織変革の起点になる
本稿では、「現場リーダーこそが成果差の起点である」と述べました。
もし成果が頭打ちになっている組織であれば、まず着手すべきは次の問いです。
「うちの営業所長は、どのスキルが強く、どこに改善余地があるのか?」
この棚卸しは、決してリーダーを批判するためではなく、組織の可能性を広げるための前向きな施策です。営業現場における管理職の戦略理解度や実践力、商談スキル、部下指導・コーチング力を、データで可視化してみませんか。
データがあれば、根拠に基づいた健全な対話が行われ、組織全体を巻き込む課題解決や介入策が推進されていきます。
現場リーダーは、最前線で顧客と組織をつなぐ中核的存在です。その能力が引き上がれば、組織全体が大きく前に進みます。
何をなすべきか。意思決定の遅れは競争劣位を招く
データの可視化によって課題が見えてしまえば、もはや放置できなくなります。
課題把握は、これ以上ない組織改革の契機となり、能力向上の最大のモチベーションになります。
具体的なステップは以下の5つです。
- 現場の戦略実行度・スキル発揮度を評価、データを取得する
- データに基づいて課題抽出、介入の優先順位を判断する
- 教育につながる評価体系や成長支援と育成計画を設計する
- 育成・評価計画に沿って、教育プログラムを開発、実行する
- 教育プログラムの効果検証と更なる改善のアプローチに取り組む
これはまさに、人材育成のPDCAです。
評価を起点にすることで、人材戦略のサイクル(ADDIEモデル等)が効果的に回り始めます。

弊社のアセスメント結果を見る限り、現場の「基礎的な能力レベル」における企業間の差は、まださほど大きくありません。
となれば、市場・顧客・競争環境が急速に変化する現代において決定的な差を生むのは、「意思決定のスピード」です。
- 現状把握が遅れる
- → 介入策の意思決定も遅れる
- → 改善サイクルが回らない
まさに、意思決定の遅れは「競争劣位」を意味します。
一部の企業では、意思決定が慎重になりすぎて改善が後手に回る傾向が見られます。問題が先送りにならないよう、今から、来年・来期に向けて、戦略的な人材育成に取り組んでいきましょう。
必要であれば、弊社では、所長の評価・分析サービス、戦略理解・実践度調査、コンピテンシー作成をはじめ、各種研修・教育支援プログラムをご用意しておりますので、ぜひご相談ください。
執筆者プロフィール

堀 貴史 リープ株式会社代表取締役・パフォーマンスアナリスト
一般財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ、認定アクションラーニングコーチ、
CompTIA CTT+ Classroom Trainer、CompTIA Project+、創造技術修士(専門職)
パンダやクマ、甘いものが大好きです。みんなに健康を心配されていますが、、、元気です!