若手育成のヒント~インストラクショナルデザインの視点から~

HPI, インストラクショナルデザイン, パフォーマンス評価・設計, 人材育成, 教育評価

ご案内:今回の記事は、「厳選!!内発的動機づけを高める方法2つ -製薬業界あるあるを添えて-」に関連した記事となっております。ぜひ併せてご覧くださいませ。

実は、先日の記事(「厳選!!内発的動機づけを高める方法2つ -製薬業界あるあるを添えて-」)の公開後に、このようなメッセージをお寄せいただきました。

メッセージの引用についても、ご快諾を頂いておりますので、こちらにご紹介させていただきます。

記事の通り、「この仕事はやっても意味がない」という言葉が良く部下から聞かれます。
私たちの若いころは、上司から厳しく「とにかくやれ」との激があり、仕事をしているなかで様々な発見、学びがありました。
最近の若手は、非常に優秀で頭も良く、その為か、自分で仕事の流れや結果をシミュレーションして、自分の考えで「意味がない」と結論付けてしまいます。

このような若手へ、まずは一歩前に進ませる為のアドバイスなどありましたら、宜しくお願い致します。

メッセージをいただきまして、ありがとうございました。

もしかすると、頂戴したメッセージと同じ想いを抱えていらっしゃる上司の方も多くいらっしゃるのではないかと考えまして、リープなりに本ブログにてご回答をさせていただきます。

ご参考になりましたら幸いです。

若手社員のその行動の理由は!?

なぜ、こちらの想いとは裏腹に、若手社員はそのような行動をとるのでしょうか?
この機会に、若手社員の行動が変わらない原因を探し、若手社員の望ましい行動を引き出してみませんか?

「行動変容」に焦点を当てる!

インストラクショナルデザインの理論にカークパトリックが唱えた「4段階評価モデル」というものがあります。
このモデルは、もともと実施した研修の評価をするためのモデルですが、これを仕事に置き換え、上司が部下に指導をした事柄に対しても応用することが出来ると考えました。

カークパトリックは、この4段階中の3段階目(レベル3)における行動変容のために必要な条件として、次の4つをあげています。

1. その人が変化したいという願望を持っていること
2. その人が何をどうやったらよいのかを知っていること
3. その人が正しい雰囲気の職場で働いていること
4. その人が変化することに対する報酬があること

この4つについて、若手の社員はどのように捉えているのでしょうか?

この4つが行動変容に必要な条件ということは、逆にいえば「行動変容がうまくいかない」場合には、この4つの条件のいずれか(もしくは全て)が欠けている可能性があるとも言えそうです。

それぞれについて、一緒に考えていきましょう。

若手社員には変化したいという願望がありますか?

こちら側は、若手社員に対して「変わってほしい」という気持ちがあったとしても、もしかすると、若手社員は「変わりたい」「変わる必要がある」とは思っていない可能性があります。

「変わりたい」と思っていない人を、周囲の人が「変える」ことは出来ません。
あくまでも本人が、「変わろう!」と思った時に変化することが出来るものですよね。

では・・・なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか。

それは、若手社員と上司の「組織が求めているあるべき像」であったり、「現状の認識」などについて、認識の齟齬が起きているという可能性があるかもしれません。

「変わりたい」とも思わず、「変わる必要性」も感じていない若手社員の行動変容を促すために、上司はどうしていけばよいのでしょうか?

その解決策の一つとして、「インストラクショナルデザインの5つの視点」があります。

若手社員と「出口」であるゴールを共有し、「入口」である現状を確認し、現状からゴールに行くまでにはどのような構造があって何をすべき(方略)か、そのために上司や会社はどのような支援をするのか、についての認識を合わせる作業をしてみると、若手も「変わる必要がある!」と認識してくれるかもしれません。

ぜひ、この5つ視点を活用してみてください。

ご参考:
実務スキルってどうやったら最速で鍛えられますか?
学びの現在地の確認をしていますか?

若手社員は、何をどうやったらよいのかわかっていますか?

若手社員が一歩前に進めない理由には、「何をどうやったらよいのかわからない」ということもあるかもしれません。
「言われていることはわかるんです、でも何からどう手を付けてよいかわからない」そのような状態になっていることも考えられます。

若手社員の皆さんは、そもそもその業務をするための知識・スキルを習得出来ているでしょうか?
また、知識・スキルが研修等で実施されている場合は、現場でもその知識やスキルを活かすことが出来ているでしょうか?

一度学んだだけで終わらず、継続して学習環境を整えていくこと、定期的に知識やスキルの確認(テストや評価)をしていくことも大切です。

また、知識やスキルがある場合には、業務内容についてどこからどう取り組むか、整理ができていないというケースも考えられます。
その場合は、指示の仕方を工夫するなどで改善できる場合もあります。

より「具体的な行動」について指示を出す意識をされるとよいかもしれません。

【指示の例】
これまで:上司が「〇〇君、これをやってみてほしい」と指示をしていた→何をどうすればよいかわからない可能性がある

改善例:「〇〇君、今指示した業務を構造的に捉え、要素分解をしてみてください」「〇〇君、それらの要素から、何が言えそうですか?」と行動ベースで指示・問いかけをしてみる

 

若手社員は、どのような雰囲気の職場で働いていますか?

職場の雰囲気は直属の上司次第と言っても過言ではないと思います。
あなたの職場の雰囲気はいかがでしょうか?

職場が肯定的学習環境かどうか見極めるための30の指標というものがあります。
ぜひ、参考にしてみてください。

今回はその一部をご紹介いたします。

1. アイディアに対して公式、非公式な反応がある
2. 提言が歓迎される
3. 失敗が教育とみなされる
4. 会社が業務関連の購読費、参加費等を払う
5. 検閲・派閥などがない
6. 社員が経営部のアイディアに反対できる
7. フォーカスグループのような集まりが奨励される
8. ブレインストーミングが一般的である
9. OJTが使われている
10. 適切な場面で研修が推奨される
11. 上司も部下が学習している内容を学習する
12. コーチングが一般的である・・・

北大路書房 「研修設計マニュアル 」鈴木克明 著p211より一部抜粋

ぜひ、このリストを参考に、上司としてのご自身を振り返ってみましょう。

雰囲気に関係する事柄として、これまでに弊社に掲載していた記事もぜひご参考にしていただければと思います。

ご参考:
永遠のお悩み「人のヤル気」問題に答えます
学びの現在地の確認をしていますか?
「がむしゃらに勉強して学んで成長しろ!」上司からの叱咤激励……でも一体どこに向かって成長すればいいの?
あなたの部下は、経験を学びにつなげられていますか?

内発的?外発的?若手社員の、変化することに対する報酬はどちらでしょうか??

誰もがそうであるように、若手社員においても内発的・外発的動機づけのどちらにより意欲を抱くか、それは人それぞれ違ってきます。

外的動機付け、例えば収入が高くなる、あるいは昇格する、といったことが動機付けになる方もいます。

人には様々な人がいることの一つの参考として、内閣府が実施した世論調査の結果をご紹介します。
このグラフは「どのような仕事が理想的だと思うか」という質問への回答結果です。

https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-life/zh/z25-1.html より抜粋

上のグラフは、令和元年と平成30年との比較のグラフとなりますが、もう少し前のデータですと、次のグラフのようになっています。
年々、「自分にとって楽しい仕事」のパーセンテージが増えており、「楽しい」という内発的な報酬が得られる仕事が「理想」と捉える方が増えてきているようです。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/10-2/dl/02_03.pdf より抜粋

このように、「高い収入を得る」といった、外発的な報酬よりも「内発的」な報酬を得たい人もいるということを知ることも今後のヒントにつながるかもしれません。

どうしたら若手社員に仕事を通して内発的な報酬を得てもらうことができるのか、を考えて、指導や指示をすることが若手社員の行動変容の大きなきっかけにつながるかもしれません。

インストラクショナルデザイン理論には内発的動機を生み出すヒントもあります。
下記ご参考リンクをぜひご覧くださいませ。

ご参考:
育成や学習がうまくいかないのは「目標に問題アリ」かも!?
永遠のお悩み「人のヤル気」問題に答えます
相手の心を動かす4つのポイント「ARCS(アークス)」モデル
ARCSによる動機づけで誤解しやすいポイント3選

部下が自発的に動けるようになるために大切な事

「部下が自発的に動けるようになってほしい」(部下に自発的に動いてほしい)

これは、上司の立場の方が共通してお持ちのお気持ちではないかと思います。
この解決策の一つが「インストラクショナルデザイン」の考え方を若手社員、部下への指導等の際に取り入れてみることです。

また、適切なタイミングで若手へのフィードバックの実施、振り返りを行うことも大切です。
コーチングとは、部下が自ら考え、自ら行動を起こし、自ら内省をし、次に繋げていけるように支援することともいえます。

コーチングのコツをお知りになりたいという方は、ご参考リンクを貼りますので、もしよろしければご欄ください。

ご参考:
残念なコーチングで終わっていませんか?

また、弊社でもコーチングのプログラムをご用意しておりますので、ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
若手社員の育成は、考え方や受けてきた教育の違いなどもあり一筋縄にはいかないこともありますが、今回ご紹介した内容が少しでもお役に立てば幸いです。

今回の内容が、少しでもお役に立てたなら幸いです。
たくさんの項目を記載しましたが、どこか一つずつでも取り入れていただければと思います。

また、詳細やその他人材育成に関するご相談は、弊社までお気軽にお知らせくださいませ。

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