パフォーマンスの状態を可視化できる評価指標「ルーブリック」

ギャップ分析, パフォーマンス評価・設計, 人材育成, 学習課題分析, 教育設計, 教育評価

ざっくりのあらすじ
1. ルーブリックは、パフォーマンスの状態を可視化し、効果的な育成を実現する評価指標である
2. ルーブリックを使用することで、あるべき姿(理想)と現状のギャップを正確に捉えることができる
3. ルーブリックは、評価基準の明確化、公平なフィードバック、次の目標設定の容易さなど、多くのメリットがある
4. ルーブリックは、あるべき姿の可視化、現状の的確な把握のみならず、人材育成ツールとしての活用もできる


みなさんのお仕事、あるいはご家庭や生活には、どんな時でも、あらゆる場面において「問題(困りごと)」が発生します。それらを解決する時に、みなさんは最初に何を考えたり、チェックしたりするでしょうか?

おそらく、多くの方は最初に「あるべき姿(理想)」を思い浮かべると思います。ではその次は?
これも多くの方は今目の前にある「ありのままの姿(現状)」を見ようとするのではないでしょうか。
そして、理想と現状の間にある距離(GAP)を捕捉して何とか解決しようと考えます。

理想 ― 現状 = GAP(理想に近づくために埋めるべきモノ)

この考え方が問題解決の基本であることは言うまでもありません。
それは企業が行う人材育成の場面においても同様です。

企業の目指すビジネスゴール達成のために、以下のようなステップで人材育成を考えている企業が多いのではないでしょうか。

① どのような人材を育成するべきか(あるべき姿・理想を考える)
② 社内人材の現状レベルはどこか(ありのままの姿・現状を知る)
③ 理想と現状の差を計測する(GAPの捕捉)
④ 人材育成の計画と実行(GAPの解決)

しかし、現実には①も②も正しく捉えていない(基準がわからない)ので③が不正確になり、④で間違った方法を実行してしまう可能性は大いにありますし、実際にこのようなお悩みを抱えている企業はたくさんあります。

「そんな悩みをできれば簡単に解決したいけれど……
GAPを的確に捉えて、成果につながる人材育成ができるツールなんてないですよねぇ……?」

いいえ!ありますよ!ルーブリックです!

ルーブリックで、パフォーマンスの状態を可視化し、効果的な育成を実現する

「ルーブリック」をご存知ですか?(立方体をした某有名なおもちゃではありません……!)

ルーブリックとは、教育の中でも主にパフォーマンス系(例:営業研修のロールプレイング)の学習成果を評価するツールのことで、学習者の理解度や技能の到達度を測るだけではなく、現状を把握し理解するための指標です。

実はルーブリックを使えば、“あるべき姿と現状のGAPを正しく捉える”ことができてしまうのです!

上の図は、企業の人材育成における営業担当者の商談スキルを評価するためのルーブリックの一項目です。
ご覧の通り、項目1.は商談の冒頭でその日の商談目的を伝えるスキル項目となります。(アイスブレイクは除きます)
“本日の訪問の目的を明確に伝えて、商談する意義を感じさせる”という評価項目に対して、レベルが1(最低)~6(最高)まで設定されていて、各レベルの評価基準が明確に示されています。

このように、各評価項目と各々の評価基準を明確に定義したものをマトリクス表で示した評価指標が「ルーブリック」です。

ルーブリックひとつで、あるべき姿と現状が明確化!GAPの解決に役立つ!

それではここから、ルーブリックを用いてどのようにあるべき姿と現状のGAPを捉えるのかを見ていきましょう。

① あるべき姿の可視化

  • 先ほどの 営業担当者の商談スキル評価項目の例では、レベル6の「顧客にとって潜在的な課題が問題提示されており、興味を引きつけていた。」ことが一番高レベルのあるべき姿であることが明確化されています。
  • 必ずしも常に最高レベルをあるべき姿とする必要はなく、目的や学習者の状況に応じて設定する事ができます。(例:新人の目標をレベル3に設定する)

② 現状の的確な把握

  • 評価基準が明確であることにより、評価者によって評価がぶれることが少なくなり、的確に現状を把握することができます。
  •  指導者によって評価目線がずれないだけでなく、学習者の自己評価にも用いることができます。

③ 育成ツールとして活用する

  • 評価項目と評価基準が明確であることから、指導者によって変化することなく指導のポイントが統一でき、公平なフィードバックに役立ちます。
  • 段階的にレベル(到達度)が示されていることで、次の目標設定がしやすくなります。
    (例:最終目標がレベル4、現状がレベル2であれば、次の目標にレベル3を設定する)

いかがでしょうか?人材育成にとっても役立ちそうではないですか?

ルーブリックを使う理由はたくさんある、使わない理由は「知らないこと」だけ

『大学教員のためのルーブリック評価入門』という本に、次の一説があります。
(“教員”は指導者に、“学生”は学習者に読み替えていただければわかりやすいと思います)

ルーブリックは時間を節約し、タイミング良く、意味のあるフィードバックを学生に返すことができ、教育・学習の過程において効果的な役割を担う可能性がある。実際、ルーブリックをあまり使わない主な理由は、単に教員の多くが「その存在」を知らないというだけである。「教えられたようにしか教えられない」というのはよくあることだが、教員は学生時代にルーブリックを経験していないのだ。
しかしながら、ルーブリックを使う理由はたくさんある。時間を効率的に使えるという点や教育手法としての素晴らしさといった点以外にも、平等性や公平さという基本的な原理もその理由となる。
出典:ダネル・スティーブンス+アントニア・レビ 著,佐藤浩章 監訳 井上敏憲+俣野秀典 訳, 『大学教員のためのルーブリック評価入門』(玉川大学出版部, 2014, p.13)

弊社が導入を支援させていただいたいくつかの企業様では、商談スキルのルーブリックを作成し、課題の発見や、スキルの育成にご活用いただいているのですが、その中でルーブリックに対して以下のようなご評価をいただいています。

~お客様の声~
・これまで経験則だったものがあるべき姿として可視化、形式知化されて整理して理解できた。
・指導者の感覚ではなくルーブリックをもとにした客観的なフィードバックができるようになった。
・商談が終わった後に自然に、メンバー同士が「ここの項目がどうだった」と振り返るようになった。
・あるべき姿が言語化されているので、商談の準備の仕方も変わった。

「問題解決」はあらゆる場面で発生します。
そのため「あるべき姿」と「現状」を可視化し、育成ツールとしても有用なルーブリックを知ったからには、使わない理由はありません。

★ルーブリックについてもっと知りたい!
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