教育設計の本質を突く!メーガーの3つの質問

パフォーマンス評価・設計, 教育設計, 教育評価

ざっくりのあらすじ
1. メーガーの3つの質問は、教育や研修の設計において「目標設定」「評価方法」「実施方法」の観点から質を向上させるフレームワークである
2. 研修やトレーニングでは、単なる知識の習得ではなく、最終的なゴールや成果を意識した設計が重要とされる
3. 適切な評価指標を設定し、研修の成果を測定・可視化することで、効果のある人材育成プログラムを実現できる
4. 効果的な研修設計のためには、適切な教授方法や学習ツールを活用し、学習者が目標を達成できる環境を整えることが必要である

アメリカのインストラクションデザインの先駆者であるロバート・メーガー(Robert F. Mager)が1960年代に提唱た「メーガーの3つの質問」をご存じですか?

この3つの質問は、企業の研修プログラムや教育設計における評価や成果を測るための指標として有効です。
なんと、この質問で、組織の教育プログラムが「いい感じ!」なのかあるいは「イケていない・・」のか判断できてしまうのです。

その質問がこちらです。

① Where am I going? (どこへ行くのか?)
② How do I know when I get there? (たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)
③ How do I get there? (どうやってそこへ行くのか?)

「シンプルすぎる!」「言われなくてもわかっている!」と言いたくなる内容かもしれませんが、そう思われた方には特に、続きをお読みいただきたいと思います。

ご参考:メーガーの3つの質問に関する別の記事も是非ご覧ください
「メーガーの3つの質問」で人材育成戦略を考える

1つ目の質問「どこへ行くのか?」

目的地(出口)はどこか?という質問になります。
研修や学習プログラムの設計において、まず必要なのは「目的」の明確化です。最近は、学習目標を示さない研修は少なくなっていると思います。

しかし、気を付けないといけないのが「今日は〇〇について学びます」といった目標です。

単に「知識を学ぶ」ことではなく、学習者がどのようなスキルを獲得し、どのような行動をとるようになるのかという成果を具体化することが重要です。企業の人材育成戦略においても、「目標達成」に直結する学習目標を設計することが求められます。

適切な学習指標を定め、ゴールを明確に設計しましょう。

ご参考:
【リープの事例紹介】学習目標を自分でブラッシュアップしてみたら
育成や学習がうまくいかないのは「目標に問題アリ」かも!?

2つ目の質問「たどりついたかどうかをどうやって知るのか?」

端的に言うと「評価方法」をどうするのか?という質問になります。

今回の研修実施後、何をどのように評価し、どのような結果であればその研修は成功だったと言えるのでしょうか?適切な評価方法は何でしょうか?
学んだ内容は、それぞれの受講者の頭の中にインプットされているはずですが、どうすればそれを可視化することが出来るでしょうか?

研修の成果を測るには、適切な評価方法が不可欠です。例えば次のような方法で研修の成果を測ることが可能です。

  • 知識定着を確認するためのテスト
  • 実技の実施とその評価
  • 行動変容の観察

成果が見えない研修は、受講者からも会社の経営層からも「研修しても意味がない」と判断されてしまい、研修の予算確保が厳しくなっている企業もあるようです。
学習者がスキルを身につけ、実行し、企業の成長につながることが求められています。

3つ目の質問 「どうやってそこに行くのか?」

この質問は、「どのようにして教えるのか?」という研修方法に関する質問になります。

会社のゴールを達成するために、
・一番適切な研修・指導の方法は何でしょうか?
・最善の研修設計とはどのようなものでしょうか?

受講者が今回のゴールを達成できるように、効果的・効率的・魅力的な研修設計になっていますか?戦略的な研修プログラムの設計には、適切な学習ツールと指導方法を選択することが求められます。

これらの「3つの質問」はとてもシンプルで、当たり前な問いに見えますが、教育担当者が絶対に忘れてはならないものです。この機会に是非覚えてくださいね。

ご参考:
インストラクショナルデザイン ~教え方にはルールがある!?~
IDを使ってブラッシュアップ!熱い想いがあふれる人材育成プラン
インストラクショナルデザインことはじめ 『ADDIEモデル』

成果を測るための「ものさし」(評価方法)を持っていますか?

・社内研修や教育プログラムを改善したい
・外部の研修や学習ツールを見直したいなど人材育成の仕組みに課題がある

そんな風に感じている場合には、まずは2つ目の問いである
How do I know when I get there? (たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)
を明確にするところから始めましょう。

2つ目の質問から「適切な評価方法を示し、実行」することに取り組んでいただくことにより目標・ゴールも明確になります。

私たちリープ株式会社は、適切な評価を実施し、成果につながるパフォーマンスのメジャーやものさしである評価指標の作成やご提供をしています。
また、評価指標を活用したフィードバックを実施する際には、T.O.T.Eモデルの考え方を取り入れることも非常に効果的なのでご紹介します。

T.O.T.Eモデル

T.O.T.Eモデルは、インストラクショナルデザイン(ID)において活用される重要な概念の一つであり、人材育成でも需要な理論の一つであり、特定のゴールに向かって進む際に、常に目標達成の状況を確認しながら作業を進めるプロセスを図式化したモデルです。

心理学者のジョージ・ミラーや社会心理学者のユージン・ギャランター、神経科学者のカール・プリプラムらによって考えられました。
T.O.T.Eとは、Test(テスト)- Operate(操作)- Test(テスト)- Exit(退出)を表しています。

「トライ アンド エラー」という言葉があるように、私たちはある目標を達成するまでに、さまざま行動を試みることがあります。そういった目標達成までの行動プロセスを具体的に説明したものが、T.O.T.Eモデルです。

T.O.T.Eモデルの具体的な流れでは、最初にゴールを設定します。そして、そのゴールを達成するための具体的な行動を検証し、実際に行動をしてみてその行動によってゴールが達成されたかどうかをテストします。
テストによりゴールとなる基準が達成されていない場合は、別の方法を検討します。テストの基準が満たされた場合は、そのプロセスから退出し、ゴールとなります。

このT.O.T.Eモデルは私たちが何気なく行っていることでもありますが、忘れがちな視点でもあります。
あなたの組織に合わせた正しい評価方法、達成度を測るためのメジャーやものさしを持ち、TOTEモデルで社員へのフィードバックを行うことであなたの組織の成果につながる戦略的な企業教育を実現してみませんか?

執筆者プロフィール

堀 貴史 リープ株式会社代表取締役・パフォーマンスアナリスト
一般財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ、認定アクションラーニングコーチ、
CompTIA CTT+ Classroom Trainer、CompTIA Project+、創造技術修士(専門職)
パンダやクマ、甘いものが大好きです。みんなに健康を心配されていますが、、、元気です!

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