VUCA時代のマネージャーと部下の新しい関係性 シェアド・リーダーシップ

ビジネススキル, マネジメント, 人材育成


VUCAといわれる時代となり久しいですが、時代と共に求められるリーダーシップの形が大きく変わってきています。

価値観の多様化が進み、ワークライフバランスを重視する人も増加。誰もが仕事を最優先したり、上昇志向を持っていたり、リーダーになりたいと考える時代ではなくなりました。若手の社員がマネジメント業務を遠ざけようとする場面も見られるようになってきました。

また、時代の変化と共にビジネスのゴールも多様化し、「1人に頼る会社構造」では対応できない場面が増えてきました。つまり、選ばれしメンバーだけでなく、社員一人一人が得意分野を最大限に活かすことが急務となっているのです。

そこで今回は、若手であってもリーダーシップを発揮しやすい、新たなリーダーシップの形である「シェアド・リーダーシップ」をご紹介します。

シェアド・リーダーシップとは

シェアド・リーダーシップとは、カリスマ性をもったリーダー1人に頼るのではなく、職場やチームのメンバー全員がリーダーシップを発揮する形のリーダーシップの事を言います。これまでのリーダーシップは「トップダウン型」や「カリスマ型」といった、限られたリーダーが職場やチームを政界に向かって引っ張っていく、「牽引していく」リーダーシップでした。

一方、今回ご紹介する「シェアド・リーダーシップ」はその言葉通り「メンバー全員がリーダーシップをシェアする」、共有型のリーダーシップです。メンバー全員が主体性をもって、その場面ごとに最適と考えられるメンバーがリーダーシップを発揮します。リーダー以外のメンバーは「フォロワーシップ」を発揮し、双方向でリーダーシップを発揮します。

シェアド・リーダーシップが特に効果的なのはこのような場面であるといわれています。

◆やるべきことが明確ではない時
◆チームの構造や業務が複雑な時
◆創造性が求められる時
◆専門性の高い仕事をしている組織

VUCAといわれる現代において、「定型的な仕事」や「絶対的な正解がある仕事」は徐々に少なくなってきています。シェアド・リーダーシップは現代において、多くの職場で必要とされている考え方と言えます。

若手のリーダーシップを引き出す、シェアド・リーダーシップ

シェアド・リーダーシップとは、役職や権限のない若手社員も含め、メンバー全員がリーダーシップを発揮する状態とも言いかえられます。
では、役職や権限を持たない若手社員はどのようなリーダーシップを持つことが可能なのでしょうか?

早稲田大学の日向野幹也教授は、権限がなくても発揮できるリーダーシップとして、「リーダーシップ最小3要素」を示しています。

①  目標設定(共有)
┗明確な成果目標を設定し、メンバーみんなで共有する
② 率先垂範
┗「権限によらないリーダーシップ」の場合、命令するなどの権限に依存しないため、まず一人一人がやってみる、行動して、その取り組みからベストソリューションを考える
③ 同僚支援
┗さまざまな理由が障壁となり、動きが取りづらいメンバーもいる。役職者のみならずメンバーみんなで、支援する姿勢をみせ、その障壁を取り除くなど、物事を進めるために、その時々に適切な人がチームを牽引する

役職者は、これらがチームの中で機能しているか、目指すべき方向性や方法論が、論理や倫理的に妥当かどうか、チェックすることが重要です。
また、シェアド・リーダーシップを実現するには、若手社員に、なるべく早い段階で「マネジメント層だけがリーダーシップを持つわけではない」ということを伝え、理解を促すことも必要になります。

営業組織におけるシェアド・リーダーシップの具体例

それでは、ストーリー形式で、とある製薬企業の営業所でのシェアド・リーダーシップの事例をご紹介します。

*MR(医師、薬剤師、看護師などの医療従事者に対し、医薬品の効能効果や副作用などの情報を提供するとともに、医療現場からの情報収集等を行う人)

A所長のリーダーシップは、F所長のそれとは大きく異なっていました。A所長はこの営業所が成果を上げるためにはメンバー全員のリーダーシップが必要であり、各メンバーの強みが発揮されるようなチームにしていきたいと考えたのです。そこで、A所長は赴任と同時に次の様な取り組みを実施しました。

1.目標設定(共有)
A所長は各メンバーとの顔合わせをしたのちに、これからは一方的な支持ではなく、皆で考えて進めていくチーム方針を宣言しました。今、取り組んで来る会社の戦略方針が会社のゴールに対してどのくらいのインパクトを持つのかについても共有。その上で、営業所として達成すべき行動目標等を一人一人と確認しました。
2.率先垂範
営業所で行われていた何人かの成功事例や、加えて、異動前まで所長が実施していたプランとアクションを共有。A所長自らも同じ目線で、議論に加わりました。アクション実施の際の新しい発想を促進し、また、障壁になっていたことやその解決策を▲営業所のMRに構造的に捉えてもらい、どう自分たちのエリアに活用・応用できるかを検討してもらいました。▲営業所のMRには、自分のエリアでどのようなプランとアクションを実施することが必要かをメンバーに主体的に計画してもらいました。計画を実施するにあたり、障壁となっていること、困っていることもまとめてもらい、営業所会議の時に、各々のプランや困っていることなども発表、共有することで皆の知恵を使って「自分だったらどうする?」「一人一人はどんな支援ができるのか?」など、営業所で起こることはすべて「自分ごと」という姿勢で、一つ一つの解決に繋げました。
3.同僚支援
プレゼンテーションスキル、疾患に関する知識で困っているMRがいることが分かり、これらに対してスキルが高いMRが中心となって、プレゼンテーションの練習会や、疾患の勉強会などが自主的に開かれるように。▲営業所の新製品Xの売上げも徐々にアップしていきました。

リスキリングとシェアド・リーダーシップ

シェアド・リーダーシップでは、各自の強みが活かされる場面が多くあります。

チーム全体でリーダーシップを発揮し、成果をだしていくためには過去や現時点で持っているスキルだけではなく、今後必要となる新たなスキルを社員に再教育(リスキリング)したり、これまでの価値観や知識を見直しながら取捨選択し、その代わりに新しいものを取り込む(アンラーニング)ことも大切になります。

シェアド・リーダーシップの様な形で、自分の得意なスキルを堂々と発揮するためには、自分のスキルがどのレベルにあるのかを知っておくことも大切です。リープでは、営業や商談のスキルを可視化し、フィードバックする評価システムやプラットフォームをご用意。新しい時代の絵営業担当者の人材育成をご支援しています。営業担当者のスキル評価のご希望がございましたら、お気軽にリープまでお問い合わせください。

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