営業マネジャーが陥りやすい「コーチングの誤解」3選
ざっくりのあらすじ
1. 多くのマネジャーが悩む「部下が育たない」原因の多くは、良かれと思って行っている「コーチングへの誤解」にある
2. 本来のコーチングとは、GROWモデル等の対話を通じて部下の「経験学習」を回し、自ら考える力を養うことである
3. 現場では「セラピスト型(聞くだけ)」「サンタ型(答えのみ)」「テレパシー型(前提のズレ)」といった誤った指導が散見される
4. マネジャー育成には理論だけでなく、実際の指導を可視化し、客観的なフィードバックで軌道修正する仕組みが必要である
「マネジャーが部下を育てられない」
「管理職が組織のボトルネックになって、組織が育っていない」
「マネジャー研修を色々やっているけど、成果が感じられない」
マネジャー育成のご相談を受ける中で、最もよく聞く声です。
皆さんの組織でも、思い当たる節はありませんか?
プレイヤーとして成果を出してきた人が昇進してマネジャーになる。
しかし、「人を育てる」「考えさせる」領域は未経験のまま、成果責任・メンバー育成・戦略実行のすべてを背負うことになります。
結果、その負担感を感じてか、「管理職になりたくない」という若手の声も珍しくありません。
もちろん、手を抜いているマネジャーばかりではありません。
むしろ、多くのマネジャーは「何とか成果を出そう」と真摯に努力しています。
それでも、部下育成がうまくいかない背景には、多くの企業が取り入れている「コーチング」に関する誤解が隠れていることが多いのです。
コーチングとは“経験学習”をまわすための仕組み
コーチングとは、単なる「会話技術」ではなく、
部下が自分の経験を振り返り、教訓を引き出し、次の行動に活かす――
経験学習をまわすための育成手法です。

よく知られるコーチングの「GROWモデル」は、そのプロセスを示した枠組みです。

参考:GROWモデルについてはこちらの記事もご覧ください。
OJTの効果が出ない原因と改善法〜人的資本ROIを最大化する組織戦略〜
この4段階の対話を通じて、部下は「どうすればよいか」を他者に与えられるのではなく、自ら考え、決め、行動する力を養っていきます。
多くの企業が管理職研修でコーチングを取り入れていますが、実際に組織に浸透していると言える企業はまだ多くありません。
その理由の一つが、マネジャーのコーチングに対する“誤解”です。
営業マネジャーが陥りやすいコーチングの誤解3選
リープが営業マネジャーの現場指導を観察していて、特によく見られる誤解を3つ紹介します。
ケース①:部下の話をひたすら傾聴&受容 「セラピスト型」
コーチング研修を熱心に受けたマネジャーほど陥りやすい落とし穴です。
「コーチングでは意見を言ってはいけない」と思い込み、ひたすら質問して、うなずいて、褒め続ける。
一見、部下も話をたくさん聞いてもらって満足しているように見えますが、内省が浅く、行動変化にはつながりません。
“聞くこと”が目的化し、行動を修正する問いがない状態です。
ケース②:具体的なHOWを大量にプレゼント 「サンタ型」
部下の話を聞いた後に、マネジャーが「こうすればいい」と
たくさんのHOWをフィードバックするケースです。
部下は正解を教わって一時的に安心しますが、それは“その場限り”の処方箋であり、他の場面では応用できません。
結果、部下は「マネジャーがいなければ動けない」状態に陥ります。
マネジャーは指導した気になり、部下は満足している――しかし、組織としての“自走力”は一向に高まらないのです。
ケース③:ゴールは言わずもがな、わかっているよね 「テレパシー型」
部下に振り返りをさせ、フィードバックも丁寧に行っている。
それでも、なぜか噛み合わない。
よく聞くと、マネジャーと部下の目指しているゴールが違っているケースです。
「まずはスライドに沿って一通り正しく製品紹介をする」なのか、
「顧客の課題に合わせて具体的に提案する」なのか。
前提を合わせないままコーチングを始めると、テーマがずれ、会話が堂々巡りになります。
GROWモデルで言えば、「G(Goal)」を割愛している状態。
ここを曖昧にすると、どれだけ丁寧に“R・O・W”を重ねても成果は出ません。

コーチング理論を「具体的行動」に落とし込むのは難しい
営業マネジャーがコーチングを活用すべき場面は多岐にわたります。
顧客訪問前のプレ・コーチング
訪問後のポスト・コーチング
月次のエリアプランレビュー
これらは、それぞれ必要な問いや深めるべき観点が異なります。
しかし、研修で少し学んだ程度で、あらゆる場面にGROWを適用できるようになるのは簡単ではありません。
結果、コーチング理論だけ学んでも実務では活用されない――というギャップが起きているのです。
マネジャー育成に必要なのは「研修< フィードバック」
現場の指導場面を観察すると、マネジャー本人は非常に前向きで真剣です。
しかし、
セラピスト型
サンタ型
テレパシー型
のいずれかに陥ってしまっているケースが多いのは、なぜでしょうか。
それは大多数のマネジャーは日常で自分のコーチングのどこがズレているのか知る機会がなく、それがゆえに改善されにくいという、組織の「構造」に要因があります。
マネジャー育成の第一歩は、コーチングの“型”がどう再現されているかを客観的に可視化し、フィードバックすることです。
コーチングが機能すれば、組織は必ず強くなる
マネジャーは決してサボっていません。
むしろ、「部下のために」と真剣に向き合っています。
しかし、
聞くだけ
答えを与えるだけ
ゴール不一致
の状態では、部下は育たず、戦略も実行されません。
だからこそ、まずは現場の部下指導の“実態”を客観的に見ること。
そこから、マネジャー自身が学び、修正し、成長していく仕組みを整えることが重要です。
リープは、HPIとID理論に基づき、マネジャーの指導実態の可視化から、実務に即したコーチングスキル育成まで、“成果につながるマネジメント”を一貫して支援します。
執筆者プロフィール

荒木 恵 リープ株式会社 取締役・インストラクショナルデザイナー
ラーニングデザイナー(eLC認定 e-Learning Professional)、e-Learning マネージャー(eLC認定 e-Learning Professional)、e-Learning エキスパート (eLC認定 e-Learning Professional)、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、認定アクションラーニングコーチ、日本評価学会認定評価士、修士(教授システム学)、RCiS連携研究員
著書に「インストラクショナルデザイン 成果から逆算する“評価中心”の研修設計」がある
趣味は温泉・秘湯・マッサージ巡り。(どこかおススメがあれば”こっそり”教えてください!)
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