事例解説“イケてる”オンライン研修を学習者分析で紐解く!

インストラクショナルデザイン, パフォーマンス評価・設計, 学習課題分析, 教育設計

突然ですが先日、久しぶりに外部研修を受講してみました。
昨今の社会情勢の影響もありオンライン開催、誰が参加するかわからないオープン講座、学ぶ内容は思考のフレームワークの実践演習という、研修を企画する側としてはかなり難易度が高い条件がそろった研修だと思うのですが、受講者としてはとても満足度の高い研修でした。
難易度の高い環境下でも、なぜ素敵な研修にすることができたのでしょうか?
今回は私が参加したオンライン講座がなぜうまくいったのか?なぜ受講者(私)は満足したのか?
その要因をインストラクショナルデザインの学習者分析という観点から紐解いていきたいと思います。

参加したトレーニングの概要

まずは今回、私が参加したトレーニングの概要をご紹介します。
ある思考法のフレームワークを学ぶためのトレーニングでした。

当日の5.5時間のアジェンダは以下のようになっていました。各セクションのメイン講師は異なっており、各アジェンダの間には10分ずつの休憩を挟んで行われました。

学習者分析とは

インストラクショナルデザインでは教えて中心ではなく、学習者中心であることを重要視しています。
よって研修設計をする際には受講者対象者である「学習者」について、8つの観点(①前提行動、②教育内容に対する前提知識、③教育内容と可能な教育伝達システムに対する態度、④学習者の動機付け、⑤教育レベルと能力、⑥学習スタイルの好み、⑦教育組織に対する態度、⑧グループの特徴)で捉え、その特徴に合わせて設計することを推奨しています。
⋙インストラクショナルデザインとは?

学習者分析の8つの観点のうち、特に重要と言われているのは①前提行動です。
前提行動を把握し、学習開始前にあらかじめ身につけておいてほしい知識・スキル・態度を揃えておくことで、余分な説明を省き、また大切なところの説明・ワークに時間を割くことができるようになります。
一般的には前提テストを実施することができれば、(①前提行動、②教育内容に対する前提知識)については把握することができます。

今回、私が参加した講座は企業内研修と異なり、オープン形式で広く募集していることから、学習者の状態を事前に捉えて準備することが難しいケースです。研修当日は、本トレーニングの教育内容である「思考のフレームワーク」の実践演習中心にするためには、学習者の(①前提行動、②教育内容に対する前提知識)について事前に把握しておくことがとても重要になりますが、このようなオープン形式の講座では前提テストを実施することはなかなか困難な状況であると言えます。

学習者分析 8つの観点からみた工夫のポイント

1.前提行動

学習開始時にあらかじめみにつけておいて欲しい知識・スキル・態度(学習の準備性)は備えているか?

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
・教育内容の「思考フレームワーク」についての前提知識を揃えるための工夫
事前に解説動画を閲覧ができるようになっていた。
・WEB会議ツール(zoom)の操作スキルを揃えるための工夫
研修当日に使うzoom機能については研修開始前にうつしているスライドに記載されており、あとは各グループにファシリテーターがつくことで補っていた。

2.教育内容に対する前提知識

学習内容について既に知っていることはないか?(例:部分的理解、誤解、関連して知っていること)

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
前提テストを実施する代わりにアジェンダ①の全体ワークにおいて順番に事例問題を解かせることでチェックしていた

3.教育内容と可能な教育伝達システムに対する態度

学習内容や学び方について学習者からの要望はないか?

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
事前アンケートによる要望の確認はなかったが、講座案内にどんなことを学ぶか(思考のフレームワーク)、どのような形式で学ぶか(オンライン、ワーク中心)については知らされており、確認した上で参加申し込みをしていたので問題はなかった。

4.学習の動機づけ

学習意欲についてARCSモデルの観点で特徴を捉えておく

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
自分で研修費用を支払って申し込んでいる人が受講しているため、動機付けはされている。(その分、期待値も高くなりがちでるが……)

5.教育レベルと能力

資格取得状況、業務成績、新しいことに対する吸収力・理解力はどうか?

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
オープン講座形式で、特に前提条件(例:●●を受講していること)は設けられておらず、受講者の背景(年齢、職業など)にまちまちでかなりバラつきが大きい。

6.学習スタイルの好み

講義・討議どちらが好きか?個別学習・グループ学習どちらを好むか?など
学習方法の好みや学習形態を試す先進性はあるか?

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
本講座の申し込み案内に、グループワーク中心で進めるBootCamp形式で実施することがはっきりと明示されていた。そのため講義形式を好む(グループワークをやりたくない)人とのアンマッチが起こらないように工夫された。

7.教育組織に対する態度

教育組織・担当者に対してどんな見方を持っているか?
(例:肯定的・建設的か、懐疑的かなど)

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
初対面の講師とのワークショップということもあり、各セクションで担当する講師のプロフィール紹介があったことにより、信頼性を高める工夫がされていた。

8.グループの特徴

学習者全体の雰囲気(チームワークなど)、学習者の多様性(バラつき)はどの程度か?

【今回参加したオンライン研修での工夫例】
すでに顔見知りの人たちもいれば、初対面の人もいる。学習者の背景は職業、年齢ともにバラつきが大きかったが、ファシリテーター側も年齢・職業などにおいて多様性をもたせることで対応していた。

 

ちなみに学習者分析の8つの観点で特に重要と言われているのは①前提行動に対する工夫の解説動画の視聴については、案内メールをちゃんと最後まで読んでいなかったため、うっかり見逃していたのですが……事前に同僚からフレームワークについて簡単なINPUTを受けていたため、問題なく受講できました。ここについては案内メールの前段に記載するなど、もっとわかりやすく案内があった方が良かったかもしれません。

難易度が高い制約条件でもID理論を活用して工夫できる

私自身はどうしても仕事柄、研修を企画したり、講師として自分が研修を実施することばかりになりがちなのですが、久しぶりに知らない人と一緒に学ぶ外部研修に参加することができて、受講者側の視点からも自身を振り返ることができ、とても貴重な機会になりました。
インストラクショナルデザインについては、「インストラクショナルデザインは理想論で、実務では色んな制約条件がたくさんあって全然使えない……」なんていう声もよく聞こえてきますが、今回の研修のように取り入れる方法はいくらでもあります。
あなたも是非インストラクショナルデザインを学んで、ご自身の研修設計に取り入れてみませんか?

執筆者に質問する

関連記事一覧