「教えない」教え方で、自力で学ぶ人材を育てる

インストラクショナルデザイン, 学習支援, 教育設計

教育とは「専門知識を持っている人が“教える”こと」=「授業」だというイメージが強い人は少なくないと思います。

実際、義務教育の9年間+高校や大学で何年も授業を受けていたら、そんなイメージになりますよね。
でも、学びの場というのは授業だけではないということも、ご経験があると思います。

顧客への提案書作成で行き詰ったときに上司や同僚と話したことで思考が進んだ、気づきがあった。
自社の業界の知識が足りなくてお客様への説明に詰まってしまったのでたくさん調べて知識を身につけた。
こういった経験も立派な学びではないでしょうか。

そんな経験にも関わらず、部下や後輩の育成など、いざ人を育てる場面になると学校の授業のように講義形式の研修を考えてしまっていませんか?

人とのディスカッションや業務の経験などが学びに有効であることをご自身の経験から実感していながら、大人を育てるときに“子供の教育方法”をあてはめてしまっていないでしょうか……?

アンドラゴジー:「教えない」教育という考え方

インストラクショナルデザインでは、教えなくても自分で学ぶことのできる人を育てるためには、大人(成人)の特性を活かした学習支援が大切であると考えます。

これを、子供を中心とする従来の教育学「ペダゴジー」に対して、「アンドラゴジー(成人学習学)」といいます。

指導の場や研修等において「教える」ことを考えるとき、つい、自分が受けてきた教育(とくに学校教育)やその方法を踏襲してしまいがちですが、アンドラゴジーにおいて大切なのは、子供向けの授業のようにしないことです。むしろ「教えない」でどうやって主体的に学べるようにするかがポイントになります。

>> リープの学習支援サービス

(A) 子ども扱いせずに大人の学びを支援するためのアンドラゴジーを採用する
(B) 研修ではなく自己啓発とOJTを能力開発の基礎と位置付ける
(C) 集合研修でもバラバラな課題に取り組む時間を設ける
(D) 熟達化に応じて「教えない」割合を増やす
(E) 成長する学びに誘うきっかけとなる研修を考える

出典:鈴木克明(2015)『研修設計マニュアル―人材育成のためのインストラクショナルデザイン―』北大路書房,p152 「表 7-1 教えない研修への提案」

✔「教育」といえば「研修」になっていませんか?
✔「研修」といえば「講義」になっていませんか?
✔ 学習者自身が意見を述べたりスキルを実践したりするような教育になっていますか?
✔ 内容は、実務と連動していますか?
✔ 学んだことを実際に業務の現場で使う機会がありますか?

講義やテキストをベースとした教育が間違っているということではなく、そういった、大人の学び方に合った工夫を取り入れることで学習をより効果的にできる、ということです。

講義形式でも「こんなときあなたはどうしますか?」「これについてどう思いますか?」という問いかけから入ることで問題や課題意識をもって学び始めることができますし(問題解決中心)、テキストもまずテスト問題などを解いてみることから始めれば、自分の現状を把握してより自律的に学習を進めることができるのではないでしょうか。

ご参考記事:あなたの部下は、経験を学びにつなげられていますか?

テキストを第1章から読み始める前に、学び方を見直そう

今回“大人の学び”についてご紹介したのは、私自身が、社会人になって業務の問題を解決する能力の足りなさや、仕事につながる自分自身の学びについて苦労したり悩んだりしたからです。

そもそも子供と大人の学びは違うということを考えたこともなく、資格勉強のテキストやビジネス書は小中学校の教科書よろしく最初から読み始める、という人間でした。

ですが、インストラクショナルデザインを知って「自分ができるようになるべきことは何か?ゴールはどこか?」「何のために学ぶのか」といったことをちゃんと考えながら実務や自分の経験と照らし合わせて学ぶ“大人の学び”に変わってきたように思います。(いまだ、試行錯誤しながらではありますが……!)

あなたの部下にも私のように、大人に適した学び方があることを知らないという人がいるかもしれません。

学び方が変われば、思考や行動も変わります。

ぜひ、大人の学び方を支援してあげてください。

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