何かを始めるのも続けるのも 「できそう!」と思えないとムリなんです!

インストラクショナルデザイン, パフォーマンス評価・設計

苦手なことはありますか?
もしくは、始めたことが三日坊主で終わってしまった経験、ありませんか?

逆に、あなたにとって得意なことはなんでしょうか?
「○○なら、すぐできるのに」「簡単にできるのに」と思うことも、よくありますよね。

では、そういったすぐにできることそうでないことの違い、もしくはやればできるのになぜかやらない、やる気になれない要因は何なのでしょうか。

行動のきっかけは「できそう」だと認知できるかどうか

カナダ人心理学者アルバート・バンデューラは、目標の達成(任意の場面でそのとき必要な行動をとれるかなども含む)において、『自己効力感』が強いほど実際にその行動を実行・遂行できると提唱しました。

自己効力感
「自己効力感」(self-efficacy)は心理学用語の一つで、何らかの課題に取り組むときに困難な状況であっても、「自分は対処できる」と自分に対して確信、自信といったイメージが持てることをいいます。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した言葉で、「自己効力感」があることによって人は物事に前向きに取り組み、困難にも耐えられるようになります。人は「どうせできない」と考えるよりも「きっとできる」と考えたほうが行動できるように、「自己効力感」は人の行動に大きな影響を及ぼします。
出典:自己効力感とは何? Weblio辞書

つまり、ある取り組みに対してそれを「できそう」だと思える力が強いほど、その取り組みを実際に遂行できるということです。
そしてこの自己効力感は、学びの場面にも大いに影響しますので、インストラクショナルデザインにおいても重要な観点となっています。

「自分にはできる」と認知している学習者は、「自分にはできそうにない」と認知している学習者よりも、より容易に・積極的に学習活動に参加し、また学習の途中に困難や障害が生じてもそれを乗り越え学習を継続できる傾向が高くなるからです。

「できそう」感を高めるには?

自己効力感を高めるために最も重要なのは「成功体験を積むこと」です。「できた」経験を積み重ねることで、「次もできそう」という気持ちを高めることができます。

とはいえ、成功体験をするには文字通りまず体験して成功する必要があります。つまり、その体験を開始するときの「え、無理……」を克服しなければいけません。

最初の「できそう」感を生み出すには、「ゴールとそこまでの道のりを具体的にイメージできること」がポイントになります。

“学習”という観点で言い直すとすれば、自身の取り組みであれ、部下や後輩の指導育成の場面であれ、
 学習目標を明確にすること ※高すぎる目標はNG!
 学習の方法と順序(目標達成の過程)を明確にすること
が大切です。

例)学習の目標や過程の明確化のイメージ

 

自己効力感が弱くなってしまう要因として、その行動を達成した状態やどう行動すればよいかがイメージできないために漠然とした不安を抱えているケースなどがあります。

その行動を達成した状態や、どう行動すればよいかがイメージでき、なおかつその人に合ったレベルの目標や方法になっていることで、自己効力感を高めることにつながります。
これだけでめちゃくちゃ高まるわけではないかもしれませんが、とりあえず、まずは「無理」感を軽減・払拭することが、最初の一歩にはとても重要です。

最初と最後に「できそう」感を高める工夫を

初めの一歩を踏み出す際のポイントは今述べたとおりですが、それによって実際に取り組むことができたときにもポイントがあります。
きちんと「フィードバック」をすること、とくに「肯定的なフィードバック」をすることです。

自分自身で取り組みを肯定的に振り返る、もしくは部下や後輩に対して「その成果を認める」ことが、次への自己効力感を高めるため、ひいてはその取り組みを継続していくためにとても重要です。

これは実体験からでもありますが、自己効力感が弱い人は、できたことよりもできないこと・できなかったことに目を向けてしまう傾向にあるのではないでしょうか。
できたことに目を向け、「今回これができたから次もきっと大丈夫」という気持ちになれることが次への大事なステップになるはずです。

さて、最後になりましたが、インストラクショナルデザインには、自己効力感を高める工夫に役立つモデルがたくさんあります。

何かの取り組みにあたって、「漠然と自信がない」「部下が不安そうだ」「なぜかやる気がでない」というときにはぜひ参考にしてみてください。

(なお、もし逆に「部下が自信過剰で困っている……」という方がいらっしゃいましたら、こちらの記事をご参考にしてみてください……!
⇒ できない人はなぜ自分の能力を高く見積もってしまうのか? 


◇ 目標を明確化するための工夫
メーガーの3つの質問,学習目標の明確化の3要素 など
【参考】
· 「メーガーの3つの質問」で人材育成戦略を考える
· 育成や学習がうまくいかないのは「目標に問題アリ」かも!?
· オシエルを科学する(熊本大学 鈴木教授インタビュー)

◇ 学習のステップを明確化するための工夫
学習課題分析,ガニェの9教授事象 など
【参考】
· 実務スキルってどうやったら最速で鍛えられますか?
· 社員の育成の「効率的」な設計方法とは?
· 効果的な学びの9つのプロセス

◇ 動機付けの工夫
ARCSモデル
· 相手の心を動かす4つのポイント「ARCS(アークス)」モデル
· 永遠のお悩み「人のヤル気」問題に答えます(熊本大学 都竹教授インタビュー)

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