「実務スキルの構造化」で人材育成の時間を劇的に短縮する
ざっくりのあらすじ
1. 変化の激しいビジネス環境において、多くの企業が人材育成に関する課題に直面している
2. 従来のKKD(経験・勘・度胸/惰性)に頼るOJTでは、スキル習得には時間がかかる上に個人差も大きくなっていた
3. 実務スキルはガニェの学習成果の5分類に示される5つの要素が総合的に組み合わされて発揮されている
4. ルーブリックを用いることで、実務スキルの構造化が容易になり、体系的に実務スキルの評価と育成をすることが可能となる

ビジネス環境の変化が激しい現代において、多くの経営陣が「人材育成」に頭を悩ませています。
「業務が複雑になり、新人の育成に従来の倍の時間がかかっている」
「管理職の業務負荷が増え、部下育成に十分なリソースを割けない」
「若手の知識やスキルが足りず、プロジェクトの進行が大幅に遅れている」
これらの課題は、単に人事部門だけの問題ではありません。実務スキル習得の効率化は、企業の成長スピードや競争優位性を直接左右する、非常に重要な経営課題となっているのです。
これまで、複雑な実務スキルは、先輩やベテラン社員のK・K・D(経験・勘・度胸/惰性)に頼るOJTが主流でした。しかし、この方法では人材育成に膨大な時間がかかり、個人の経験に依存するため習得度合いにもバラつきが出てしまいます。これでは、急速に変化する市場に対応していくのは難しいでしょう。
そこで今回の記事では、これまでの人材育成に代わる新たな方法として、実務スキルを体系的に可視化し、効率よく育成する実務スキル育成方法をご紹介します。
実務スキルは5つの要素でできている
実務スキルを効率的に習得するためには、まず実務スキルの正体について理解を深めることから始めましょう。
教育心理学者ロバート・ガニェ(Robert Gagné)は、「人が学習で身につける能力」を「あたま」「からだ」「こころ」の大きく3つに分け、さらにそれを①言語情報、②知的技能、③運動技能、④態度、⑤認知的方略の5つに分類し、「ガニェの学習成果5分類」として提唱しました。
実務スキルもこれら5つの要素が組み合わせで発揮されていると考えることができます。

営業担当者の実務スキルを例に考えてみましょう。「商談スキル」と聞いて、あなたはどんなスキルを思い浮かべますか?話のうまさでしょうか?それとも、巧みなプレゼン資料作成スキルでしょうか?
商談スキルをガニェの学習成果の5分類に沿って要素分解してみると、以下のように細分化することができます。
(例)商談スキルの場合

| 言語情報:製品・業界の知識、ビジネスマナーの知識 など 知的技能:顧客ニーズの理解、顧客の困りごとや課題の仮説設定、戦略立案、質問技術 など 運動技能:ツール操作、発声や滑舌、表情や姿勢 など 態度:顧客中心思考、粘り強さ、学習意欲 など |
商談スキルは、話の巧みさといった運動技能だと誤解されているケースが多いのですが、本質的には、場面ごとにルールを適用する応用的な知識(知的技能)が真の学習課題となります。
商談スキル研修でロールプレイングだけを反復練習しているケースが多く見られますが、これはスキル(運動技能)としての練習に過ぎません。
複雑な思考力が要求される商談の練習方法としては、運動技能としてのロールプレイングだけでなく、応用力である知的技能のトレーニングと組み合わせて考える必要があります。
このように、漠然とひとくくりに呼んでいる「商談スキル」も、要素分解していくことで、さまざまなスキルが複合的に組み合わされたものだとわかります。
これがスキルの「構造化」です。
スキルが構造化されていると、要素ごとにできる/できないの評価がしやすくなり、指導のポイントが明確になり、結果として人材育成の効率化につながるのです。
実務スキル育成の実践ステップ
実務スキルの構造化のイメージが少しつかめたところで、構造化のステップをもう少し具体的に見ていきましょう。
例えば以下のようなステップで実務スキルの構造化を進めていくことが可能です。
Step1: ハイパフォーマーの実務スキルを要素分解する
まずは、成果を出している人の行動や思考を丁寧に観察し、どのようなスキルが成果につながっているのかを洗い出します。
☐録画・観察などによって、ハイパフォーマーの行動を詳細に分析する
☐学習成果の質に沿って分類する
☐評価基準(リープの場合は、ビジネスアセスメント・ルーブリック™)を作成する
実務スキルの要素をただ闇雲に列挙するのではなく、自社で成果を出しているハイパフォーマーの特性から紐解いていくことで、“成果を出すため”の実務スキルの構造化につながります。
Step2: 学習の優先順位をつける
次にスキルの中でも、どれを優先的に習得すべきかを見極め、効率的な学習順序を考えます。
☐成果への影響度が高い要素を特定する
☐習得しやすさを考慮した学習の順序を決定する
スキルの難易度や組織の現状の課題に応じて、優先的に学習すべき課題から育成に取り組むことが効率化につながります。
Step3: 段階的・体系的な育成プログラムを設計
最後に、学習のゴールと現在地を明確にし、スキル習得の道筋が見える育成プログラムを設計します。
☐各段階の明確な到達目標を設定する
☐効果測定とフィードバックの仕組みを構築する
☐個人の現状のスキルレベルに応じたカスタマイズを行う
学習のゴールを明確にし、そのゴールに対する学習者の現状を適切に評価してフィードバックを行うことで、人材育成がより構造的かつ効率的になります。
実務スキルの構造化を促進する「ビジネスアセスメント・ルーブリック™」
実務スキルの構造化が人材育成の効率化につながるといっても、その構造化自体が簡単ではないのでは?と不安に思われた方も多いかもしれません。特にこれまでK・K・D(経験・勘・度胸/惰性)で人材育成を乗り越えてきた組織においては、Step1の評価基準を作成するところまで行くのもなかなか大変な道のりといえるでしょう。
ここでは、その解決策のヒントとなる「ルーブリック」をご紹介します。
ルーブリックとは、ペーパーテストなどでは評価しづらい複雑なパフォーマンスの状態を可視化し、効果的な育成を実現するための評価指標です。
下記の画像のように、評価項目と各々の評価基準を明確に定義したものをマトリクス表で示した評価指標を「ルーブリック」と呼びます。
私たちリープでは、この複雑な実務スキルの習得度を評価するために「ビジネスアセスメント・ルーブリック™」を開発しています。

ビジネスアセスメント・ルーブリック™は、次のような人材育成の課題を解決し、実務スキルの構造化を促進することができます。
人材育成の課題① :「優秀な実務担当者」が、なぜ優秀かを説明できない(あいまいなロールモデル)
営業担当者の商談スキル評価項目の例では、レベル6の「顧客にとって潜在的な課題が問題提示されており、興味を引きつけていた。」ことが一番高レベルのあるべき姿であることが明確化されています。
しかし必ずしも常に最高レベルをあるべき姿とする必要はなく、目的や学習者の状況に応じて設定することができます。(例:新人の目標をレベル3に設定する)
このようにルーブリックを活用することで“あるべき姿の可視化”が可能になります。
人材育成の課題② :スキルを客観的かつ適切に評価できない
評価基準が明確であることにより、評価者によって評価がぶれることが少なくなり、的確に現状を把握することができます。
指導者によって評価目線がずれないだけでなく、学習者の自己評価にも用いることができます。
ルーブリックを活用することで“現状の的確な把握”が可能になります。
人材育成の課題③ :指導のポイントが人によってばらばら
ルーブリックでは評価項目と評価基準が明確であることから、指導者によって変化することなく指導のポイントが統一でき、公平なフィードバックに役立ちます。段階的にレベル(到達度)が示されていることで、次の目標設定がしやすくなります。(例:最終目標がレベル4、現状がレベル2であれば、次の目標にレベル3を設定する)
このようにルーブリックは、評価指標としてだけでなく、“育成ツール”としても役立ちます。
これらの特徴は、実務スキルの構造化のStep1~3を進めやすくするために効果的であり、このことが人材育成の構造化アプローチにルーブリックをおすすめする理由です。
参考:実務スキルの構造化を実践する際には「インストラクショナルデザイン」の考え方が非常に役に立ちます。こちらのコラムもぜひご一読ください。
あなたの部下への「教え方」、間違っていませんか?
参考:ルーブリックについての詳細は、こちらの記事もご覧ください。
リープ株式会社パフォーマンス評価・設計サービス
パフォーマンスの状態を可視化できる評価指標「ルーブリック」
実際に弊社のお客様でも、ビジネスアセスメント・ルーブリック™ の活用により
短期間での人材育成と成果創出につながったケースが多くあります。
詳細は、以下のボタンより資料をダウンロードして、ぜひご覧ください。
まとめ:実務スキルの構造化で人材育成を効率化する
変化の激しいビジネス環境では、従来の「時間をかけて経験を積ませる」育成手法は限界を迎えています。
実務スキルを「知識・スキル・マインド」が複合的に組み合わされて発揮されているものとして捉え、ハイパフォーマーの能力を構造化して体系的に習得させる手法こそが、育成時間の短縮と成果向上を実現します。
特に営業力強化においては、単なるロールプレイの反復ではなく、商談の背景にある知的技能を可視化し、体系的にトレーニングすることが重要です。
人材育成にあたり、以下の様な課題をお持ちの方は、ぜひリープにご相談ください!
✓ 新人の戦力化が遅れている(時間がかかっている)
✓ 管理職が育成に時間を割けない
✓ 若手のスキル不足でプロジェクトが止まる
✓ 組織全体の底上げをしたい
✓ 効果的な人材育成の仕組みを構築したい
実務スキルの構造化による次世代型の人材育成システムで、あなたの組織の人材力を飛躍的に向上させませんか。
執筆者プロフィール

平林 幸子 リープ株式会社 カスタマーエンゲージメント事業部
主にデジタルマーケティングを担当。
リープ入社後、ゼロからインストラクショナルデザイン(ID)を学び、時々コラムの執筆もさせていただいています。
ID初心者の方に寄り添ってご相談に乗れるかと思いますので、お気軽にご連絡ください。
趣味は凧揚げ(季節問わず)。実は少林寺拳法黒帯です。