「コーチが話しすぎてしまう」コーチングの問題点とは?
先日このようなご相談を頂きました。
どうしてもコーチの私が話しすぎてしまうのですが、どうするとよいでしょうか?
また、コーチングで話しすぎてしまうと、何がいけないのでしょうか?
コーチングとは、コーチが「聴く」を主体に、部下などのクライアントが自ら気づき、行動変容し、目標を達成するサポートを行うものです。そのため、コーチングの研修では「クライアントの話を聞きましょう」とよく言われると思うのですが、話しすぎてしまうコーチもいらっしゃるようです。
一体どうすれば「聴く」を主体としたコーチングが実施できるのでしょうか?
・本記事は、企業における上司と部下で実施される、スキルの向上のためのコーチングに関する記事となっています。
・部下がいらっしゃる場合、「クライアント」は、「部下」と置き換えてお読みいただくとイメージがしやすいかもしれません。
コーチングで話しすぎていませんか?
部下を持つ上司の立場になると、会社で「コーチングをする」機会があるかと思います。
コーチングの研修で「コーチは聴くことが大切」と教えられているので、「クライアントである部下の話を聴こう!」と頑張っていませんか?
しかし、表面的に部下などのクライアントの話を聞こうとすると、「なぜ話を聴く必要があるのか」ということが分からなくなってしまいます。すると、ついつい「指導」(Teaching)をしてしまい、上司が話しすぎてしまうという現象が起こりがちです。
研修で学ぶようにコーチングにおいて「聴く」ことはとても重要なのですが、なぜ聴くことが必要なのか、その本質を考えてみましょう。きっとコーチの行動が変わるはずです!
パラクラインとオートクライン
ここで、コーチング用語である「パラクライン」と「オートクライン」をご紹介します。
これらの言葉は、もともと私達の体の細胞で起きている現象に起因する言葉なのですが、コーチとクライアントがそれぞれ一つの細胞であると捉えるととても分かりやすくなります。
パラクラインとオートクラインを知ると、「聴く」重要性がよく理解でき、コーチングの場面で話しすぎるということが無くなるかもしれません。
「パラクライン」とは?
『パラクライン』とは、ある細胞が分泌物を出し、それを別の細胞の受容器がキャッチし作用が促される現象のことをさします。
パラクラインを人間に置き換えると、情報を他人に伝達するという行為となります。
オートクラインとは?
パラクラインと同時に『分泌物を出した細胞自身』に作用する現象があることも分かっており、『オートクライン』と呼ばれます。
人間に置き換えると、自分が相手に対して行うアウトプット(対話など)によって自分自身が「自分はこんなことを考えていたんだ!」と認識したり、「私がやりたいことはコレだ!」と発見したりすることと言えます。
コーチングで『聴く』ことが重要視されるのは、コーチがクライアントの話を聴くことによって、クライアントにオートクラインが起こるからです。「自分はこんなことを考えていたんだ!」と認識したり、「私がやりたいことはコレだ!」など、自分自身で動機づけするからこそ、行動変容が起こり、ゴールへたどり着きやすくなります。
ちなみに、コーチがクライアントに話してばかりいる状況は、すなわち、コーチからクライアントへパラクラインしか起こっていないことになります。あるいは、コーチ自身にオートクラインが起こっているとも言い換えることもできます。
つまり、コーチが話しすぎてしまうということは、コーチのための時間になってしまうことを意味します。
この話をご理解いただけると、コーチングの場面で話しすぎてしまうことの問題点がみえてきませんか?
オートクラインを起こす秘訣
ここまで、コーチングの目的にはクライアントの「オートクライン」を起こすことであることをお伝えしました。
それでは、オートクラインを引き出すコツはなんなのでしょうか?
ここまでフォーカスしてきた「聴く」スキル以外にも重要なコーチングのスキルがあります。
もう一つオートクラインを引き出すためにコーチングで必要なスキルは「質問」スキルです。
コーチが構造的に質問をし、様々な角度の質問を適切に投げかけ、クライアントの思考を活性化させましょう。
「聴く」スキルに承認や質問のスキルなども複合的に使ってコーチングを実施することで、クライアントのオートクラインを引き出すことが出来ます。
■ご参考リンク
部下のスキルとパフォーマンス向上を促進!GROWモデル
結果主義では目の前の課題を解決できない!? 成功する組織は「関係性の質」を高めている
マネジャーのOJTにおける指導スキルに関する代表的なお悩み2つ。
スキルを育成するコーチングにはコツが必要です。
コーチングは一定のプロセスや意図を明確にすると実施しやすくなり、部下のオートクラインを引き出します。
その結果、部下の成長を促すことが出来ます。
リープでは、マネジャーのコーチングスキルの可視化(評価)や、コーチングスキル向上のご支援をしております。
部下のスキル向上を促すためのコーチングに課題をお感じになっていれば、是非リープまでお問合せください。