“マインド”を変えるための5つのステップ

パフォーマンス評価・設計

「結局、“マインド”が低い人には何をしても、響きません」
「社員のパフォーマンスに影響を与えるのはやっぱり“マインド”だと思うんです…」
あなたも伸び悩む部下や後輩、研修の受講者をみて、こんな風に思った経験があるのではないでしょうか?

一方でこんな声もよく聞こえてきます。
「そもそも“マインド”はその人の資質の部分だから、トレーニングで何とかなるものでもない…」
「“マインド”系の研修って、なんとも“フワフワ”していて苦手だなぁ…」

果たして社員の“マインド”はトレーニングで変えることができるのでしょうか?
“マインド”とは、そもそも何を指しているのでしょうか?
ここではインストラクショナルデザインの観点から、“マインド”にアプローチするための方法を考えていきたいと思います。
⋙インストラクショナルデザインとは?

Step 1:まずは“マインド”の正体を「学習成果の質」で分類する!

インストラクショナルデザインでは教えよう(学習させよう)としていることの種類、つまり学習の種類に応じて、「できる」ようにするための“指導方法”や「できる」ようになったことを確認する“評価方法”が提案されています。
この学習の種類は「あたま(言語情報・知的技能・認知的方略)」「からだ(運動技能)」「こころ(態度)」に分類され、「学習成果の質」と呼ばれています。
マインドを変えるための学習は「こころ(態度)」に分類されるもので、上記の分類の中でもっともアプローチが難しい領域とされています。
参考:社員の育成の「効率的」な設計方法とは?

Step 2:どんな場面での“マインド”を変えたいのか、具体化する!

“マインド”とは、「その物事や状況を選ぼう/避けようとする気持ち(もしくは判断そのもの)」といえます。
まずは、あなたが変えたいと考える“マインド”は「どのような」物事や状況を選ぼう/避けようとする気持ちや判断なのかについて、目指す態度の学習目標として具体化します。

「自ら勉強する習慣を身につけて欲しいなぁ。しかも自分だけじゃなくて、まわりのメンバーも巻き込んでくれるといいなぁ…」を学習目標化すると…
態度の学習目標:商談スキルを上げるための営業所勉強会を自発的に企画する

参考:部下の行動が変わらないのは目標設定の仕方が原因? “ふわっとした目標”を具体的にする3つのチェックポイント

Step 3:変えたい“マインド”に必要な知識・スキルの下位目標を洗い出す!

最終的に目指す学習目標(上位目標)の下位目標を洗い出すことで、教えるべき内容や構成を整理し、学ぶべきアジェンダとその順番を決めることができます。(学習課題分析による構造化)
態度の学習目標「その物事や状況を選ぼう/避けようという判断をする」ことができるようになるためには、前提として知っておかなければいけない「知識」、できなければいけない「スキル」があると考えます(下位目標)。それらの知識・スキルを習得した上で、「その物事や状況を選ぼう/避けようという判断をする」ための態度(マインド)にアプローチします。

例えば…
態度の上位目標:商談スキルを上げるための営業所勉強会を自発的に企画する
知識(知的技能)の下位目標1:企画の運営(実践)ができる
知識(知的技能)の下位目標2:企画の立案ができる
知識(認知的方略)の下位目標3:必要な知識・スキルの習得方法が提案できる
知識(知的技能)の下位目標4:商談スキルを上げるために必要な知識・スキルが説明できる

Step 4:最後の砦「マインド(態度)」にアプローチする!

下位目標の知識・スキルの習得を確認できたら、いよいよ態度にアプローチです。
「赤信号は“止まれ”のサイン」であることを知識として知っていても赤信号で横断歩道を渡る人がいるように、必要な知識・スキルを習得していたとしても、人は必ずしも「その物事や状況を選ぼう/避けようとする」ための行動を選択するとは限りません。そのため態度にアプローチする必要があります。
態度へのアプローチ方法を先程の事例で考えると以下のような方法があります。

学習者にとって説得力のある人物・情報源を調べる
例)成績優秀な▲▲営業所のトップパフォーマーAさん
その人物に協力してもらい、ある場面での選択行動の重要性を解説する
例)Aさんが自分だけでなく、▲▲営業所全体の成績を上げるために、どんな企画を行ったか話してもらう
他の人が、その態度表明によって得た良い結末を事例として紹介することで代理体験させる
例)営業所長から、過去に実施した営業所勉強会を企画していた経験が、新任営業所長時代にとても役に立ったことを話してもらう

練習方法としては、「この場合、あなたならどうする?」式の問題設定で、選択肢別の結末(良い結末/悪い結末など)を疑似体験させる方法があります。

Step 5:「マインド(態度)」学習の成果を評価する!

態度の評価は非常に難しいと言われています。アンケートで「気持ち」や「行動」を質問しても、建前を書かれてしまうので、信憑性は低くなります。もっとも良いのは実際の行動を「そっと観察」することですが、時間と手間がかかりすぎてしまいます。
インストラクショナルデザインでは、なるべく具体的な仮想場面を複数パターン用意し、行動を選択させ、なぜその行動をとるのか「意図」を説明してもらい、その内容を評価することを有効としています。
参考:研修はテストとアンケートの両方でしっかり効果測定しよう!

捉えどころにない“マインド”をインストラクショナルデザインで“くっきり”と具体化する

ここまでのお話からお分かりの通り、マインドへのアプローチは知識・スキルを習得させる以上に、やらなければいけないことが増えます。冒頭にあったような「“マインド”さえ変えられれば、何とかなる!」は、正確には「必要な知識・スキルは身につけて、あとは“マインド”のみ…というところまでもっていけたら、“マインド”さえ変えられれば、行動が変わる!」ということなのです。
「“マインド”を変えるって、何から手をつけて良いかわからない…」ってあきらめていた方も、こんな風にインストラクショナルデザインに沿って考えてみると、捉えどころがなかったマインドも、やるべきことが“くっきり”と具体的に見えてきませんか?
是非、インストラクショナルデザインの考え方を取り入れることで、“フワフワ”したマインド研修ではなく、具体的な行動変容につながる研修を考えてみてください!

執筆者に質問する

関連記事一覧