管理職必見!部下のモチベーションを上げる5つの方法

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ざっくりのあらすじ
1. モチベーションは「衛生要因」と「動機付け要因」の二つの要因によって左右される
2. 「衛生要因」は環境が影響するもの、「動機付け要因」は人の心理が影響するものである
3. 「衛生要因」と「環境要因」は相互に補いあっているので、両方を満たす事が重要である
4. 部下のモチベーションを上げるには、管理職がアプローチできる動機付け要因を充実させることで向上させられる

春になると、企業の管理職の皆様にとっては、モチベーションの維持・向上が大切なテーマになります。
この時期は、新しい社員が職場に異動してきたり、新入社員が入ってきたりと、顔ぶれが様変わりする企業も多くいらっしゃいます。
同時に管理職の頭を悩ませるのが、「どうやったら部下のモチベーションを維持できるのだろうか」という事ではないでしょうか。
なぜなら、毎年フレッシュさ満開で入社した時から、だんだんと部下のモチベーションが下がっていくのを見る事が増えるからです。特にこのZ世代はどう扱ったら良いのか・・と若い世代の扱い方にも悩む管理職が増えています。

では、どうやったら新入社員のモチベーションを維持する事が出来るでしょうか。

アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグによって提唱された、人々の満足度についての理論があります。
ハーズバーグは二要因理論によって、従業員のモチベーションをマネジメントできると結論付けています。

そこで、今回は、ハーズバーグの二要因性理論を基に実際の職場への施策例について説明していきたいと思います。

ハーズバーグの二要因理論とは?

二要因理論とは、モチベーション「動機付け要因(Motivator Factors)」「衛生要因(Hygiene Factors)」の2つの要因によってなりたつものとする理論です。では、それぞれの言葉の定義から説明していきましょう。

「動機づけ要因」と「衛生要因」の違い

動機づけ要因とは?
二要因理論を構成する1つ目の要因が、動機づけ要因です。動機づけ要因とは、仕事そのものに関する要因であり、満足感を与えてモチベーションを上げる可能性のある要因を指します。新入社員がやりがいや達成感を感じることができる要因です。「達成すること」や「承認されること」、「仕事そのもの」や「責任」、「昇進・向上」などが代表的な動機づけ要因であり、この要素が満たされれば満たされるほど、仕事に対して前向きになれる定義づけられています。

具体的なものを挙げると以下のとおりです。

責任ある仕事を任されているか
仕事の達成感を感じやすいか
適正に評価され、満足のいく報酬をもらえるか
仕事が自己成長に繋がるか

衛生要因とは異なり、主に内発的なものです。
これらの要因は、不満感が出るとモチベーションが下がってしまいますが、満足感が高まればその分モチベーションを向上させることが分かっています。
Z世代には響きそうなことそのものですね。

衛生要因とは?
衛生要因は、労働環境に関する要因であり、それが充実しても満足感にはあまり繋がらないけれども、不足していると満足感を下げてしまう可能性のある要因です。
動機づけ要因が「達成すること」「承認されること」といったポジティブな言葉で定義づけされる一方で、衛生要因は不満につながる要素であると定義づけられています。新入社員に対しては十分な給与や労働条件、職場の安全性、上司との関係、組織のポリシーなどが必要です。これらが不十分である場合、新入社員はストレスや不満を感じ、モチベーションが低下する可能性があります。衛生要因をなくしても仕事に前向きになるわけではない、という点が動機づけ要因との大きな違いです。

具体的には以下のようなものです。

上司や同僚との人間関係が良好か
会社の方針が自分に合っているか
職場環境が整っていて働きやすいか
給与体系など労働条件に満足しているか

これらは外発的な要因が多くなっており、仕事環境全体への満足度ともいえるでしょう。
これらが整っていないと従業員は不満感を強く感じてしまうため、離職に繋がりやすい要因です。
Z世代においては、給与体系ではただ金額が高いというだけではなく、タイムパフォーマンスも良いという事が満足度が高い様です。
お給料が高いからといっても、早く帰れない職場には不満を持ちます。

動機付け要因と衛生要因の関係性とは?

動機付け要因と衛生要因は相反する概念ではなく、互いに足りない部分を補い合うような関係になっています。

動機付け要因である「達成」や「承認」は、仕事の満足度を高める上で重要な要素ですが、衛生要因が満たされていない状態では動機付け要因だけ満たしても効果がありません。給与に不満がある状態で仕事の成果を褒められたとしても、誰だって「言葉はいいから給料を上げてくれ」と思うでしょう。

衛生要因である「給与」や「福利厚生」は、不足・悪化すると不満が溜まる原因となる要素ですが、求める水準を超えて改善してもあまり影響がなくなります。やりがいや将来性を感じられないような仕事では、待遇に不満が無くても「今の仕事を続けていていいのだろうか」という不安感やモチベーションの低下から、離職や転職につながるケースがほとんどです。
オープンワーク(口コミサイト)の分析では、「不満」で辞めるのではなく、「不安」で辞める事が多いという傾向になっているそうです。

社員のモチベーションマネジメントを行う上では、職務満足の反対が職務不満足ではない点に注意が必要です。職務に満足してもらおうとして不満要因を徹底的に解消したとしても「不満がなくなる」のであって「満足する」わけではないのです。

社員の職務満足度を上げるためには、動機付け要因と衛生要因のどちらか一方だけ満たせばよいというわけではなく、一方だけが充実しても満足感には繋がりにくいことも意識すべき点です。衛生要因における問題を解決した上で動機付け要因を満たす必要があるのです。
最低限の不満足を取り除いたら、すぐに満足度向上にもバランス良く手を配りましょう。

ハーズバーグの二要因理論を組織改善に活用する方法

それでは、ハーズバーグの二要因理論を具体的にどのような形で従業員のモチベーション向上に繋げることができるのでしょうか。
ここでは、人事制度や労務管理という福利厚生のようなアプローチではなく、チームを牽引するリーダーやメンバーを育成しなくてはいけない管理者ができる取り組みを考えてみたいと思います。

動機づけ要因を満たしてモチベーションを向上させる5つの方法

動機づけ要因を満たすことで、モチベーションアップに繋げる方法を解説していきます。
動機づけ要因は人の心理に関係しているため、急激な変化を期待することはできません。ただし、これから紹介する取り組みを繰り返すことで、着実にその効果を実感できるはずです。

人材育成に注力する
動機づけ要因を活用し、従業員のモチベーションを高める方法の1つ目が人材育成に注力するというものです。部下を適切にマネジメントできるよう管理職への教育を施すのも動機づけ要因を満たすのに効果的です。よく教育された管理者は、部下のやる気をうまく引き出し、人間関係を改善し、職場全体のモチベーションを引き上げることができます。また、従業員が希望する資格取得を応援するといった企業姿勢も重要です。会社から期待され、応援されていると感じる従業員は動機づけ要因を満たすことができます。資格を無事取得できれば達成感も得られ、モチベーションをさらに上げることができるでしょう。

評価とフィードバックの仕組みを作る
動機づけ要因を活用し、従業員のモチベーションを高める2つ目の方法が、評価をフィードバックを仕組み化するというものです。これまでに解説してきたように、動機づけ要因は賃金を上げる、福利厚生を充実させるなどの方法では満たされることがありません。活躍している人材が認められる仕組みをつくることも意識することが重要です。

メンバーの意見に耳を傾ける
動機づけ要因を活用し、メンバーのモチベーションを高める3つ目の方法が、メンバーの話を聞き、一人ひとりの意見に耳を傾けるというものです。時にはサーベイを利用すると良いでしょう。従業員に対して職場の環境や人間関係などの要因を分析し、従業員満足度を把握するためのものです。モチベーションアップなどの組織改善を目的としたアクションの一歩目がメンバーの意見を聞き、職場環境に状況を把握するというものです。

仕事の成果を称える
仕事の成果を、認め、時に誉めることも、動機づけ要因を活用し、メンバーのモチベーションを高める方法です。表舞台に立つことが多い目立つ人ばかりを誉めるのではなく、一人ひとりの成果やパフォーマンスに目を向け、承認をフィードバックしていきましょう。動機づけ要因は、すべての従業員のモチベーションに関わる論理であるため、コーチングなどを利用して、アクナレッジメントすることも大切です。

働きやすい環境を整える
働きやすい環境を整えることも、動機づけ要因を活用し、従業員のモチベーションを高める方法の1つです。従業員の働き方やその価値観を尊重することも重要です。また、長時間労働や休日出勤によって、衛生要因に問題が生じていないかも常にチェックしておきましょう。特にZ世代は自分の時間を大事にする傾向があり、ワークライフバランスが整っている職場を評価します。
動機づけ要因は、衛生要因とのバランスが非常に重要であるため、社員の働き方を認めながら、不満を排除する取り組みを進めていきましょう。

【ご参考】
・若手育成のヒント~インストラクショナルデザインの視点から~
・成果につながる人材育成システム「スキル評価」
・承認のスキルを上げて、部下の信頼を得よう

まとめ

今回は、新入社員、特にZ世代のモチベーションアップのさせ方をハーズバークの二要因理論を持って説明しました。
人事や管理職が気にすることが多いモチベーションも、実は動機づけ要因と衛生要因の2つによって成り立つ二要因理論を用いることで解説することができます。モチベーションは、たびたび「やる気」と訳されますが、実は環境への不満を意味する衛生要因が小さい状態でなければその効果を発揮しません。先に挙げた5つのポイントを押さえながら、動機づけ要因と衛生要因の2つのバランスを整えることに注力することをおすすめします。

執筆者プロフィール

堀 貴史 リープ株式会社代表取締役・パフォーマンスアナリスト
一般財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ、認定アクションラーニングコーチ、
CompTIA CTT+ Classroom Trainer、CompTIA Project+、創造技術修士(専門職)
パンダやクマ、甘いものが大好きです。みんなに健康を心配されていますが、、、元気です!

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