社員アセスメント導入の企画が通らない理由と解決策|「またアセスメント?」と言われたら
ざっくりのあらすじ
1. 多くの企業で現場や社内のステークホルダーからの反対で、アセスメント導入が難航するケースが多い
2. アセスメントについて誤解されていることにより、アセスメント企画が受け入れられないことがある
3. アセスメントを戦略実行の一部として位置づけ、経営層と現場の両方に納得してもらうことで成功した事例がある
4. アセスメントを単なる評価ツールではなく、戦略実行を支援する「武器」として再定義し、事業戦略との連動を明確に示すことが重要である

「社員アセスメントを導入したいけど、なかなか企画が通らない」
「現場からは“またアセスメント(評価)か…”とため息交じりの声が上がる」
このような課題に直面している人事・研修担当者の方も多いのではないでしょうか?
企画自体はHPI(Human Performance Improvement)やID(Instructional Design)の理論に基づいて設計しているにもかかわらず、社内のステークホルダーからは
「結局、何のため?」
「手間ばかり増えるだけでは?」
といった反応に阻まれてしまう…。
今の時代、人的資本経営を掲げる企業が増え、育成を“投資”と捉える機運は高まっています。
ですが現実には、現場や経営層に「これは有効な打ち手だ」と納得してもらうには、まだまだ超えるべき“壁”があるのが実情です。
アセスメントが受け入れられない3つの“あるある事例”
ではなぜ、アセスメント導入の提案が受け入れられにくいのでしょうか?
現場や本社で実際によく挙がる“あるある”を3つ挙げてみます。

あるある1: 「アセスメントしても、課題は解決しない」
→ アセスメントが“診断だけ”で終わるものという誤解が多い。
「評価するだけでは意味がない」「どうせまた棚卸でしょ?」――
このような声は、アセスメントが“ソリューションの一部”として捉えられていないことが原因です。
HPIの観点から言えば、アセスメントは現状のパフォーマンスギャップを特定し、それを埋める育成プロセスにつなげる起点。
診断だけで終わらせず、人材育成を通じた課題解決の全体像(グランドデザイン)を示し、アセスメントを「打ち手」の一部として再定義する必要があります。
あるある2:「現場は忙しくて、そんな時間は割けない」
→ 研修やアセスメントが“ビジネスの成功”とどう結びつくかが見えていない。
これはHPI(Human Performance Improvement)とID(インストラクショナルデザイン)両軸での視点が求められる場面です。
アセスメントがビジネスゴールや事業戦略とどのように関係するのか、その「道筋」を明確に示さない限り、現場は「やらされ感」しか持てません。
アセスメントは“忙しい時間を割いてでも取り組むべきこと”である――そう思ってもらうには、業務上の課題やKPIに直結するものであると伝える工夫が必要です。
あるある3:「自分たちの課題は自分たちが一番わかっている」
→ アセスメントが“自律的な学習と成長”を支援する仕組みとして伝わっていない。
現場には現場なりの知見と自負があります。そこに一方的にアセスメントを持ち込んでも、反発が起きるのは当然です。
アセスメントは「監視されるためのもの」ではなく、「現場が自ら気づき、学ぶための仕組み」だという認識にならなければ、受け入れられません。
特に今、人的資本経営が注目されていますが、調査によると、経営層と現場の間では、その体感温度にギャップがあるのが実情です。だからこそ、“翻訳”が必要なのです。
参考:令和4年5月 経済産業省 人的資本経営に関する調査 集計結果
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/survey_summary.pdf
アセスメントを含む研修企画を通した事例:製薬企業X社の取り組み
実際にこれらの壁を乗り越え、アセスメントをうまく研修施策に組み込んだ企業の事例をご紹介します。
製薬企業X社では、事業部ごとの戦略実行度にばらつきがあり、MR(医薬情報担当者)のセリングスキルや、マネジャーの指導力に課題を感じていました。そこで、戦略実行を後押しする育成施策として、アセスメントを含む半年間の研修プログラムを企画しました。

対 本社ステークホルダー
まず、製品戦略や営業戦略といった組織が掲げているビジネスゴールを起点に、そこに必要なスキル(例:MRのセリングスキル、マネジャーのコーチングスキルなど)を定義し、それを達成するための育成プランとアセスメントの設計を提示しました。
単なる「評価ツール」ではなく、戦略遂行の手段の一部としてアセスメントを位置づけたことで、ビジネスサイドの意向を組み込んだアセスメントを企画することで、経営層にも「投資としての納得感」を得てもらうことができました。
対 現場のマネジャー・MR
半期ごとの戦略共有会などを活用し、アセスメントは「皆さんの目標達成を支援するためのツール」として位置づけました。
評価や監視ではなく、戦略遂行の業務プロセスに組み込み、振り返りやリフレクションを促す「支援ツール」として伝えたことで、「戦略の一部としての育成」という捉え方が浸透しやすくなりました。
X社では、半期ごとにそれまでのビジネスの進捗を振り返り、製品戦略・営業戦略を現場(マネジャー、MR)に説明する重要な会議が開催されているのですが、製品戦略・営業戦略が説明される流れの中で、その実行を後押しする企画の一部としてアセスメントを含む半年間の研修プログラムが紹介されていました。
戦略についての重要な会議で企画の意図や意義がトップからのメッセージとして発信されたことがインパクトとして大きかったことは皆さんのご想像の通りです。
一方でこのような場で時間をとってもらえたのは、企画段階からのステークホルダーとのニーズのすり合わせを通じて、戦略を遂行するための施策の中に組み込んでいただけたことが背景にあります。
関連記事:製品戦略や営業戦略を現場に伝えた後に、理解度を確認することも大切です
戦略が腹落ちする組織をつくる ― 戦略理解度テストのススメ
アセスメントが組織に受け入れられるための重要なポイント
この事例から見えてきた、アセスメント企画を通すためのポイントは以下の3つです。
ポイント1: 戦略との連動を明確に示す
アセスメントは戦略達成のための“ソリューションの一部”であると伝えること。
「事業戦略 → 必要スキル → アセスメント・育成」とストーリーを描くことが重要です。
ポイント2: “入口〜出口”の設計を示す
IDに基づき、「成果(出口)→ ギャップ把握(入口)→ 育成施策 → 再評価」の一連のプロセスを具体化し、計画の全体像を見せましょう。
参考記事:
学びの現在地の確認をしていますか?
ポイント3: 相手視点のストーリー・事例で話す
研修部起点の説明ではなく、「この場面で使える」「自分たちのビジネスの課題に効きそう!」と思える言葉で語ることが、相手の納得を得るカギです。
このポイントはアセスメントだけでなく、研修の企画を通す場面においても、同じことが言えるのではないでしょうか。
参考記事:
ステークホルダーがうなづく研修企画・提案とは?
まとめ:アセスメントを“戦略実行の武器”にしませんか?
アセスメントは、単なる「評価」や「棚卸し」ではありません。
戦略を現場に“実装”するための、強力な“武器”です。
事業戦略を起点に、人的資本戦略、研修計画、そしてアセスメントが一本の線でつながっている——
この価値創造のサイクルを、どう描き、どう伝えるかが問われています。
あなたの組織でも、アセスメントを「戦略実行をドライブする触媒」として再定義し、その第一歩を踏み出してみませんか?
アセスメントをソリューションの一部として定着させる仕組みづくりは是非、リープにご相談ください!
執筆者プロフィール

荒木 恵 リープ株式会社 取締役・インストラクショナルデザイナー
ラーニングデザイナー(eLC認定 e-Learning Professional)、e-Learning マネージャー(eLC認定 e-Learning Professional)、e-Learning エキスパート (eLC認定 e-Learning Professional)、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、認定アクションラーニングコーチ、日本評価学会認定評価士、修士(教授システム学)、RCiS連携研究員
著書に「インストラクショナルデザイン 成果から逆算する“評価中心”の研修設計」がある
趣味は温泉・秘湯・マッサージ巡り。(どこかおススメがあれば”こっそり”教えてください!)
教育に関わるデータの活用方法から、データに基づいた教育プランの設計まで、皆さんのお悩みをサポートしますので、お気軽にメッセージください。